「本郷零時3分」展

 夜の本郷キャンパスを見たことがありますか。東大内部の方で、研究・仕事等で遅くまで残っていたことのある方は「ああ、あるけどそれが何?」と言うかもしれません。でも、夜の本郷キャンパスの魅力を知っていますか。

 夜の本郷キャンパスが放つ魅力をひたすら撮り続けた写真家・広川智基さん。そして彼をプロデュースし、その持ち味を存分に引き出した学生たち。今回はそんな彼らが開く写真展「本郷零時3分」展について、そして彼らの写真展や東大に対する思いについて話していただきました。

今回お話してくれた方々


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一言で言うとどんなイベントですか。

深尾 「学生の企画による写真家広川智基の写真展」です。

イベントの企画段階のエピソード、そして東大へのこだわりを教えてください。

深尾さん

深尾  そもそも、この企画は東京大学情報学環コンテンツ創造科学産学連携教育プログラムの演習授業の一環として始まったものなんです。それに、すでに展示場所が東大の工学部2号館と決定されていたんです。それは無視できなかったので、「東大でやるんだったら何をやればいいんだろう」ということをまず考えました。

濱田  私は東京大学情報学環コンテンツ創造科学産学連携教育プログラム一期生で、修了生なんです。それでこの企画の主任をしてくださっている東京大学大学院情報学環教授の馬場章先生の生徒でもあったんです。今回、私が「東京」をテーマにした広川の写真を馬場先生の所に持っていってプレゼンをしたんですね。その中に東大を撮った写真があったんです。そしたら馬場先生が、是非学生と一緒に写真展を作ってみましょうとおっしゃってくれました。大学院でこつこつと勉強する学生たちと、夜中に一人でさまよいながら写真を撮る広川の姿とがオーバーラップしたということでした。それで「これは響く」と先生が判断してくださって、今回の企画・東京大学情報学環コンテンツ創造科学産学連携教育プログラムの学生と写真家広川智基の写真展が実現しました。

広川  まず最初に、僕が写真を撮る時にどういうことを考えているのかを、馬場先生と学生と僕で頭がパンクするかと思うくらいになるまでしつこく話し合いました。

深尾  そして次に広川さん抜きで学生と馬場先生、濱田さんで話し合いを重ねました。そして広川さんの作品に実際に触れてその良さを語り合いました。テーマはこの段階ではまだ決まっていなかったのですが、見せていただいた写真の中に東大の写真が何枚かあったんです。その写真が、東大を一歩退いた視線から見ている写真で、東大が普段とは違う感じに見えました。東大生は東京大学自体を素直に見られていないと感じていて、「最高学府」などのイメージが介在しているんじゃないかと思います。それを、東京大学にとって全くの「stranger」である広川さんが撮ることによって、東京大学に対する東大生のねじくれた気持ちをはがすことができるんじゃないかと思いました。

広川  そして6月中旬に学生からプレゼンをしてもらって、そこで東大を被写体にした写真展を開こうと決定したんです。僕も、今回東大をニュートラルに撮れたと思っています。実は僕は塾にも行ったことがなくて、センター試験も受けたことないんです。だから僕は、言わばずっと東大とは"真逆の所"にいたんだと思うんです。だから東大に対して何の思い入れもなかったんです。でも逆に、だからこそ素直に東大を撮れたのだと思います。ただ単純に、東大に対する先行的な「価値」に邪魔されることなく撮りたい場所を探せたんだと思います。

小川  私は慶応大学の学生なのですが、やはり東京大学に対して先行するイメージを持っていました。でも、建物としての東大にいろいろな「価値」が付加されてきた中で、今回の写真展では建物や場所が持つ"空気"を感じることができたかなと思っています。だから、東大以外の学生が見ても楽しめる写真展だと思いますよ。

濱田  言わば"真逆の人たち"がぶつかって出来た写真展なんですよね。このような試みは今まで写真の世界の中でも授業の中でもなかったことだと思っていて、だから新しいことが出来たのかなと思っています。

広川  でも"真逆の立場"だけど、話してみたら「自分と同じだな」と思った部分もあって。東大生と関わる中で、「東大生はメガネでがり勉」というイメージも払拭できたから楽しかったです。

濱田  コンテンツプロデューサーを志す学生にとっては、クリエイターとのやり取りは貴重な経験になったのではないかなとも思います。

小川  今回やってみて、「プロデューサー」と一口に言っても仕事の幅が本当に広いなと感じました。プロデューサーの仕事というと輝かしいイメージがあったんですが、アーティストと一緒に進める仕事以外にも広報・資金調達・会場の設定などの仕事がありました。いろいろなことを考えながらいろいろな人とコミュニケーションを取らなければならなくて大変でした。

広川さん

広川  確かに「プロデューサー」と言ってもどんな仕事か分からない部分があって、「プロデューサー」の先行するイメージが壊れて実際の仕事が分かったならば学生にとっていい勉強になったのではないかと思います。

深尾  主催者側のねらいとしては、2つあるんです。 一つは、授業としての成功です。学生が広川さんに今回はこんな風に撮ってはどうかと提案したり、また写真展やカタログなどを通して広川さんをみんなに伝えていく。このような"写真家広川智基をプロデュースするプロセス"を通じて、プロデューサー育成という授業の目的を達成しようというものです。 もう一つは、写真展としての成功です。期間が3週間あるので、来場者数2000人を目指しています。でも、どういう人が来るのか、どういうことが伝わるのかももちろん大切にしたいですね。そしてやはり東大生には是非来てほしいですね。

広川  作品を作って発表するという作業は、普段は一人で行うことが多いんですが、今回はいろいろな人と出来たものについて一つ一つ話し確認しながら進めたので、正直面倒くさいと思ったこともありました。だけどそこであきらめずにしっかりやったからこそ、今回は僕一人ではできないすばらしい作品が出来たんだと思います。

広川  それで、6月中旬から9月中旬まではひたすら撮影をしました。

濱田  撮影にも学生が同行して、撮影スポットを選ぶために撮影前に学生と私達だけでロケハンをして、その上で広川に来てもらって相談しながら撮影しました。

広川  僕が自分で見つけて一人で撮影したスポットもありましたよ。学生に提案されても自分が気に入らなかったら撮りませんでしたし。それで、僕が一人で撮影していた時に声をかけてきたのが池邉くんだったんですよね。黒い布をかぶるタイプの昔のカメラを使って撮影していたので、怪しい人に見えたんだと思います(笑)。そんなふうにして夜中に弥生門を撮っている時に、池邉くんが「何やってるんですか?」と話しかけてきたんです。そこで連絡先を交換して、今回の企画を手伝ってくれることになったんです。

池邉  アートプロデューサーになりたいとはずっと思っていたんです。その日の晩もアーティストの方と夜まで話していて、帰りにアートについていろいろ考えながら歩いていたら、弥生門で広川さんに出会いました。「あ、この人面白そうだな」と直感的に思ったんです(笑)。若そうな人だったので声もかけやすかったんですけど。

濱田  撮影以外にも、学生たちは資金調達をしたり、週1〜2回会議をしたり、広報をしたりしました。最近はカタログ制作で忙しいです。展覧会は期間が来れば終わってしまうけど、カタログは記録として残るものなので、夜遅くまで写真を選ぶ作業をしています。これからは雑誌の企画やチラシ、学内ポスターで本格的に展覧会を広報していきます。

トークイベントはどんなことをやるのですか?

池邉さん

池邉  トークイベントは、僕が企画と当日の司会進行を担当しています。 1日目は「写真とデザイン」がテーマです。写真とデザインがどういう部分でつながりを持っているか、また違う部分は何かを考えてみたいと思います。ゲストである写真家の広川泰士さんとグラフィックデザイナーの佐藤卓さんのお2人にも何か発見があればいいと思うし、お2人から見た広川さんの写真についても聞いてみたいと思います。

濱田  現在、広川泰士さんは写真展を、佐藤卓さんは展覧会を開催されているので、いわば旬のゲストの方々なんです。そういう今が旬のお2人にとっての「写真とデザイン」とは何かということもお聞きしたいなと思っています。

池邉  2日目はこの企画の主任で東京大学大学院情報学環教授の馬場章先生と、写真評論家の飯沢耕太郎さんがゲストです。テーマは「芸術写真と学術写真」です。芸術写真というと馴染みがあるけれど、学術写真と言われてもピンと来なかったりあまり面白みを感じない人が多いのではないかと思います。今回はゲストのお2人と学生と広川さんで話していき、広川さんが撮った東大の写真を芸術写真としてではなく学術写真、「記録」として見てみたら何か違うものが見えてくるだろうかということを探っていきたいと思っています。

池邉  2回のトークイベントを通して、僕らが気づいていない広川さんの写真の新たな一面を発見できたらいいなと思っています。

ワークショップはどのようなことをやるのですか。

池邉  ワークショップは、広川さんと一緒に撮影地巡りをします。アットホームな雰囲気の中で、プロの写真家と一緒に撮影地巡りをしながら、展示されている写真のエピソードを聞いてもらいたいと思います。参加者が撮影地で持った印象と広川さんの写真との違いを楽しむことが出来る企画になっています。またデジタルカメラではないフィルム式のカメラをこちらから貸し出しワークショップ中に現像もしますので、実際に写真を撮り、撮った写真を楽しむことも出来ます。

深尾  フィルム写真を撮ることも普段滅多に出来ることではないと思いますから、楽しいと思いますよ。

池邉  自分でカメラをカスタマイズしながら写真を撮るのは、なかなか体験できないことだと思いますよ。その面白さを現像した写真を実際に見て体感してもらえたらなと思います。

深尾  参加者が普段撮る写真と、ワークショップで撮る写真とが違ったら面白いなと思います。

ずばり、イベントの魅力は何ですか。

深尾  一言で言うと、東京大学のきれいな写真が見られることです。それが一番の魅力だと思います。特に本郷キャンパスと深い関わりがある人にとっては、本郷キャンパスで自分が好きな場所が"作品"としてきれいな写真になって目の前に在るというのはとても感動すると思うんです。その感動を一人でも多くの人に味わってほしいと思います。

濱田  東大外部の人には、東大が敷居の高い場所ではなくてきれいな場所なのだと知ってほしいですね。気軽に来てほしいなと思います。

池邉  夜景というと、例えば横浜などのキラキラしたイメージを持つ人が多いかもしれないけれど、素朴で静かな夜景もあるということを知ってほしいです。夜の本郷はとても魅力的な場所です。

小川  見てほっと一息つけるので、特に忙しい人に見てほしいですね。ふと立ち止まって深呼吸できる写真が多いですよ。

池邉  空の色も一枚一枚違うんですよ。月の光や天気によって変わるんです。そういう世界があるということを発見してほしいです。

広川  子どもの頃は夜空の絵って黒い絵の具でぐりぐり塗りつぶしていたと思うのですが、夜の空は実はそんなに一様ではないんです。雲の流れなどを見ても面白いですよ。


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