iii Exhibition 8

iii exhibition

 7月と12月に工学部二号館で開かれている"iii exhibition"も今回で8回目となり、本郷キャンパスではおなじみのイベントとして認識されるようになってきている。このインタビューではその制作展に関わっている4人に集まっていただき、制作展の裏側について語ってもらった。

制作展の概要

野村 "iii exhibition"は2004年から続いている制作展で、主にメディアアートという技術と芸術の両方を生かした作品を、大学院学際情報学府(以下、学環)と情報学環コンテンツ創造科学産学連携プログラム(以下、コンテンツ)の学生が中心となって展示しているものです。

 この制作展は、実は授業の一環で行っているものです。学環の「学際理数情報学研究法3」という通年の授業でして、この制作展を実行することが講義の目的です。

 まず4月にガイダンスがあり、メディアアートに関するレクチャーを受けたのち、運営や制作作品を決めます。このとき、学生は運営スタッフも作品展示も最低1回は行う必要があって、展覧会に両面から関わることが求められています。制作展は7月と12月の2回行われています。

 授業では作品の進捗を発表して、同じ立場の学生や助教の鈴木太朗さんにその場でアドバイスを貰うなどして制作を進めていきます。

参加したきっかけ

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野村 私は自分の研究をアートとして表現したいというより、先に知っている知識・既にある技術を表現する過程で、新しい発見をすることが出来るのではないかと思って表現をしています。研究では顔の表情を分析していて、はじめはディスプレイを眺めている人の心理状態を調べていましたが、制作展を通して公共の空間にも興味を持ちました。今後にもいえますが、そういう新しい発見を表現できたらいいかなと思っています。

櫻井 学環を受ける前に、この制作展に行く機会がありました。制作展をどういう過程で作っているのかに興味が湧き、大学院に受かったらこの授業に参加してみたいと思っていたんです。

 私は文化・人間情報学という文系のコースに所属していますが、理系の技術的なことを知りたいと思ったときにこの授業を知りました。何かを表現することが好きだったというのもあります。

野澤 授業や学環のことを知る前に制作展に興味を持って、コンピュータや技術を使って感覚を変容できたら面白いなと思ったので、まず学環に入学しました。そこで、偶然この制作展を作る授業が学環にあるのを知って、参加しました。

作品の紹介・研究分野との両立

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櫻井 私はもともとマンガに興味があって、院でもマンガを記録媒体として生かす研究を行っています。制作では、文章で書かれた日記を箱に入れるとマンガになるという装置を作っています。つくりとしては実はアナログなのですが…。自動でマンガを生成する仕組みを、はじめはデジタルで出来ないかなと思ったんですが、先輩や友達としていた話が膨らんでいまの形になりました。

野村 私の作品はクリスマスツリーにLED(発光ダイオード)をつけ、それが顔に反応して変化するというものです。マサチューセッツ工科大学にいる友人がハードウェアを開発してくれて、一緒に制作しています。でも実は彼はアメリカにいるので当日来られないですし、作品を作りはじめてからは一度も会っていません(笑)。顔を認識して検出する技術について研究しているので、この作品の成果も論文に生かそうと思っています。

 私はゲームなどのコンテンツ系を専攻しています。ゲームには人を夢中にさせる要素として「没入感」がありますよね。今はどうしてそれが起こるのかを研究しています。今回の制作でも、没入感を表現したいと思いました。アクリルの水槽を2層にしてその中に水を循環させ、その循環で物体が動く仕組みを作り、人が水槽に乗ったときに反応する装置です。

 高度なデジタル技術で没入感を出すものはもう遊園地などで実現していますが、その方法ではだいぶお金と技術がかかるので、何か違う新しいやり方で没入感を再現できないか、という挑戦をしてみました。

野澤 もともと、ヴァーチャル・リアリティやライフログ(行動記録)の応用面に興味がありました。こうしたデータは膨大すぎて、どう扱うかが重要です。今回の作品では、記録するときに人間の主観的な時間を使えないかというのがテーマです。つまらない時間はあとで考えると短く感じ、楽しい時間は濃く感じられるよう、心拍数に合わせて写真を撮る装置を作っています。楽しいときは心拍数が上がるのでその分たくさんの写真を記録として残せるようになるという仕組みです。

野村 こうしてみんなの作品を見てみると、モノをただ作るというだけでなく、人間がそれを見たときにどう思うのかや、人間の行動について考えている人は多いかもしれないですね。

野澤 モノを作っていく中で問題を解決していこうと考えている人は多いですね。工学的な解決方法、というのでしょうか。

 理系の人に多いかもしれないね。そういう考え方に触れられるのも、文系と理系の融合の場としての制作展だったのかなと思います。

櫻井 楽しいことって、ふっと思い出すことがありますよね。その感覚と同じで、楽しかった記憶を形に出来ればいいかなと思って作っています。そういう発想の原点は私も野澤さんも同じなのかもしれないですね。

制作展を通じて

櫻井 アイデアが出ないときは本当に大変ですね。

野村 生みの苦しみは、モノを作っている以上あるよね。

櫻井 そういう時は、人にとにかく聞きますね。自分の目で見ていても固まってしまうので人に見せて別の見方がないか探ります。

野村 私もどんなことをしたら面白いかというのを、技術的なことを知らない人にも聞いてみるように心がけました。突拍子もないアイデアから新しいものが生まれるので、採用するかどうかは置いておいても話をとにかく聞くようにしました。

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野澤 先輩からのアイデアやもらえるものが大きいと思います。制作展には修士1年がほとんどですが、去年授業を取った先輩がアドバイザーとして参加してくれています。「あした修士論文の提出なんだけど」と言いながらも、手伝っていただいていて本当に助かります。

櫻井 最近は寝不足気味なのも大変かな(笑)。

 理論的にはうまくいくはずなのに、実際にやってみるとうまくいかないときはありますね。それから、私の場合は持っている技術が少なく、工具や基盤を使ってのものづくりも初めてなので、発想がどうしても限られてしまうところはありました。

 運営面としては、いろいろな人が来ているのでみんながそれなりに幸せになるように運営することが難しいですね。例えば作品の説明をどの程度書きたいかという問題にしてもそうですし、アーティスティックに雰囲気を作りたい人もいれば技術的に高度なものを作りたい人もいることもです。

 とりあえず、短期間で作品のクオリティを上げることが一番大変なことですね。

野村 広報の仕事としても、授業の一環であることや作家の気持ちに合わせて文章をつくらないといけなかったりするので、色々な人のことを考えるのは難しいですが勉強になりますね。

 人に見せることの難しさを味わえましたね。技術的・芸術的に完璧でも、自己満足になってしまっては作品として意味がないと思いますし、運営を同時にやるのは難しいですから、うまくいけばコミュニケーション能力が鍛えられますね。モノを作ったり、皆で何かを作りあげるのが好きな人にもぜひ参加してほしいです。

野澤 作家と運営の両方を体験することで、意見されることが多々あるので、人の意見を素直に受け止めることは大切かな。

櫻井 たまに、厳しいこともぐさぐさっと言われること、ありますよね…。人に見せる以上、いいものを作りたいという意識をみんなが持っているからこその指摘ですから、きちんと受け止めないといけないですよね。

野村 授業とは言いましたが、実は2単位なんです。作業量からすれば10単位くらいになりそうですけど(笑)。ただ、やっぱり単位以上のものを得られると思っているからこの制作展に関わっているというのはあります。文理融合を目指している学環とはいえ、文系と理系の学生が同じ立場で参加できる数少ない機会だったなぁと思います。

 はじめは作品は画面上だけで実装しようと思っていたのですが、実体を持ったものを作りたいと思うようになったきっかけは、やっぱりこの制作展で色々な人の考えに接したからですね。

今後

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野村 作品を作っていく過程で研究課題のもとを見つけていったので、それを論文という形にしていきたいですね。来年の制作展では、その研究結果を作品にしていきたいと思っています。

野澤 今回の作品で得た成果を論文にしていきたいと思います。運営面で苦労したところもあったので、来年も参加して後輩に協力したいですね。

櫻井 今回はアナログな装置で展示しますが、将来的にはデジタルなものにしたいですね。技術的にもまだまだやれることがたくさんあると思っています。

 私の場合、実は研究テーマとは直接関係ない研究内容になるのですが、ゲームに関わっていく立場として、展示会を通してモノを作る経験をこれからも積んでいければと思います。

最後にメッセージなどお願いします。

野澤 多彩な人が時間をかけて考え、作っているので、いつもと違う体験をしてみたい方はぜひ来てください。

櫻井 展示会だから、と堅苦しくならないでほしいですね。面白いことをやっているだろうと思って来て欲しいです。

 ある意味では未完成のものもありますし、展示会の性質上全部の説明はできないのですが、作品に対して色々な思いを持っているので、どんな苦労をしながら作ったのかを想像したり聞いていただいたりしたらもっと楽しめると思います。それから、こういう授業の形態もあるんだなあということも感じてもらえたら嬉しいです。

野村 アートや技術のことを「難しいだろうなぁ」と思っている人にこそ、ぜひいらして欲しいですね。そんな人でも面白いと感じてもらえる作品は必ずあると思います。それから、12日(水)に作品とダンスのコラボレーションも行う予定なので、こちらも見所です。

基本情報

東京大学大学院学際情報学府・東京大学大学院情報学環
コンテンツ創造科学産学連携教育プログラム 第8回制作展"iii exhibition 8"
会期:2007年12月7日(金)〜13日(木) 11:30〜19:00(最終日は16:00まで)
会場:工学部2号館2階工学部展示室・2階中庭・9階92B
入場:無料
URL:http://i3e.iii.u-tokyo.ac.jp/


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