第8回東京大学科学技術インタープリター養成プログラム公開シンポジウム

東京大学科学技術インタープリター養成プログラムは、定期的に公開シンポジウムを開いています。今年は「東京大学の科学コミュニケーション教育の10年」と題され、修了生の発表や教官の講演などが行われました。今回はその様子をレポートしました。


東京大学科学技術インタープリター養成プログラムは、全学大学院副専攻プログラムの1つで、社会と科学技術の架け橋となる人材の育成を目的とし、教養教育高度化機構により運営されています。このプログラムはおよそ1年に1回の頻度で公開シンポジウムを開いており、今回取材させていただいた第8回シンポジウムは、「東京大学の科学コミュニケーション教育の10年」と題されていました。会場となった21KOMCEE WESTのレクチャーホールに、学生など約80名の聴衆が集まっていました。

初めに、石井洋二郎総合文化研究科長、藤垣裕子プログラム代表、黒田玲子プログラム前代表が挨拶されました。石井研究科長は文系と理系とをつなぐインタープリテーションの必要性を、専門教育を受けた学生に「領域の限界」を越えてほしいという思いにも触れながら述べられました。藤垣代表は科学をどう伝えるかだけでなく、何を伝えるかも学習すべきだと述べ、インタープリターの役割を科学者の社会的リテラシーと市民の科学リテラシーに分けて説明なさいました。黒田前代表はインタープリターの必要性が高まった理由として、科学の学際化、グローバリゼーションが進んでいること、環境問題や資源問題の深刻化、研究への市民参加の高まりなどを挙げられました。

次に、科学技術インタープリター養成プログラムの修了生4名による発表が行われました。

7期生(2012年度修了)の大嶽晴佳さんは、新領域創成科学研究科で航空機材料の研究をしながらプログラムを履修し、卒業後は文部科学省に務めています。プログラムでは今求められている博物館像について研究されたそうです。他にもポスドクや女性研究者登用に関する制度、研究活動の不正行為への対応についても学び、それらが現在の科学技術・学生政策局での仕事で役立っているとのことでした。

3期生(2008年度修了)の深津幸紀さんは、薬学部からロースクールに進み、卒業後は司法修習生として弁護士を目指しています。プログラムでは法廷における科学の扱われ方について研究したそうです。プログラムの利点として多様なインタープリター像に触れられたことを挙げられました。

2期生(2007年度修了)の堀部直人さんは、学部時代は生態学を専攻し、大学院では油の移動を研究して、現在は出版社「ディスカヴァー・トゥエンティーワン」に務めています。科学コミュニケーションと出版物デザインとは相手と自分との間にインターフェースをつくる点で共通していると仰っていました。

1期生(2006年度修了)の大西隼さんは、大学院では筋ジストロフィーに関するRNAの研究を行いながらプログラムを履修し、卒業後は番組制作会社「テレビマンユニオン」に務めています。院生時代に立花隆氏になぜそれほど精力的に活動されているのかと質問した際、「わたし」を知りたいからだという答えをもらい、自身が科学にもメディアにも興味をもった理由と共通していると感じたことが印象に残っているそうです。

休憩をはさんだ後、読売新聞東京本社科学部長の長谷川聖治氏が、「科学コミュニケーション教育に期待するもの」と題して講演なさいました。長谷川氏は冷戦後の社会情勢の変化を踏まえ、豊かさの中での潜在的不安の解消を科学インタープリターの役割の1つとして挙げられました。その後は自身の記者としての経験から、科学における不正の増加、科学ジャーナリズムの批判性の欠如を問題としながら、市民に科学に対する興味をかきたて、市民に生きる知恵として科学知識を身に付けさせることができるなどの科学報道の重要性を述べられました。その上で、科学を応援しながら批判する、社会における科学を意識する、絵心をもつなどの科学記者に求められるものを挙げられました。

続けて長谷川氏、藤垣代表を含めた4名によるパネルディスカッションが、情報学環の佐倉統教授の司会のもとで行われ、それぞれの方がこれから科学コミュニケーション教育をどうするかについて意見を述べられました。情報学環の大島まり教授は、科学の社会的意義を反省し、目標として夢を想像できるようにすることと、科学技術と社会との統合により科学を伝え創造することを挙げられました。藤垣代表は、専門性と市民性の往復を他人事ではなく具体的なものとして捉えられるように研究者を教育すること、市民とは何かという概念を整理すること、プログラム・教養教育高度化機構・大学・他大学との連携のそれぞれの段階におけるロードマップをつくることを目標として述べられました。総合文化研究科の渡邊雄一郎教授は、科学技術が重要となっているからこそ社会的意義が強まっていることを踏まえ、科学をより政策に反映できるようにすることを目標として挙げました。長谷川氏は、それぞれのコミュニケーションにおいて受け手となる市民を前提知識などによってカテゴリ分けし、対象を明確にすること、科学コミュニケーションを中心として分野を統合することを期待されました。その後は質疑応答があり、4名が質問に応じてより深まった見解を語られました。

最後に石浦総合文化研究科副研究科長の挨拶により、シンポジウムは締めくくられました。

全体として、科学技術と社会とのつながりの重要性が伝わるシンポジウムとなっており、両者のつながりにおける面白さや課題、そのつながりの展望も感じることができました。科学技術インタープリター養成プログラムや公開シンポジウムに興味を持った方は、webページをご覧ください。

リンク

科学技術インタープリター養成プログラム:http://science-interpreter.c.u-tokyo.ac.jp/index.html

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掲載日:14-12-10
担当:伊藤重賢
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