柏キャンパス一般公開2015

10月23日(金)、24日(土)に東大柏キャンパスのキャンパス公開が実施されました。多くの部局が参加し、展示や体験コーナーを設けたり、講演会やクイズ大会などを開催したりしました。

今年(2015年)ノーベル賞を受賞した梶田隆章先生もここ柏キャンパスにある宇宙線研究所の所長を務めています。その「ノーベル賞効果」もあったのか、当日は大勢の中高生や小さな子供を連れた親子連れでキャンパスは賑わっていました。


宇宙線研究所

東京大学宇宙線研究所は、宇宙線の観測と研究を行う東大の研究所です。同研究所で行われているニュートリノに関する研究で、2002年に小柴昌俊特別栄誉教授、2015年に同研究所の梶田隆章所長がそれぞれノーベル物理学賞を受賞しています。今回の一般公開では、常設展示やクイズ大会などのほか、梶田所長のノーベル賞受賞を記念して特別展示や交流会も開催されました。

常設展示

宇宙線研究所では展示「宇宙と素粒子の展示室」が行われました。

ニュートリノは物質を構成する最小単位である素粒子の一種であり、物質とほとんど相互作用しないため観測が非常に難しい物質です。そのニュートリノを観測するために作られた巨大な検出器、それがスーパーカミオカンデです。高さ・直径がおよそ40mの巨大な水槽で、岐阜県の神岡鉱山の地下1000mに設置されています。

梶田所長のノーベル賞受賞理由は、「ニュートリノに質量があることを示す、ニュートリノ振動の発見」でした。ニュートリノには電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノの3種類があります。ニュートリノ振動とは、ニュートリノが飛んでいる間に別の種類のニュートリノに変化してしまうことであり、これはニュートリノが質量を持っているために起こる現象です。今回梶田所長らの研究グループは、スーパーカミオカンデにおいて、空からやってくるニュートリノと地球の裏側から地球を通り抜けてやってくるニュートリノの数の違いに注目して、ニュートリノ振動を発見しました。これらの功績は宇宙の始まりや進化の理解につながると期待されています。

展示ではこれら宇宙や素粒子に関する研究が紹介され、研究に携わる先生方や学生が熱心にその内容を説明していました。また、検出器の模型をペーパークラフトで作るコーナーや、来場者が宇宙に関する質問をなんでもできる「宇宙なんでもデスク」などが設けられていました。

クイズ大会「コスミックイズ・チャンピオン」

宇宙線研究所前の広場では2日間で合わせて3回のクイズ大会が行われました。

クイズは○×形式で、「暗黒物質は黒いか」といった宇宙や素粒子に関する問題が出題されました。成績優秀者には梶田所長の直筆サイン入りマグカップが賞品としてプレゼントされました。

サイエンスカフェ「コスミック・カフェ」

柏図書館メディアホールでは、「不思議の粒子 ニュートリノ」「スーパーカミオカンデとニュートリノ振動実験」と題したトークイベントが開催され、ニュートリノ研究の最前線で活躍する先生方が研究活動やノーベル賞について解説しました。トークの後には来場者と先生方の交流会も開かれました。

その他

ノーベル賞を受賞された梶田所長との交流会や、霧箱を作成して放射線を観察する実験教室「コスミック・ラボ」などのイベントが行われました。

大気海洋研究所

身近なICTを応用したバリアフリー技術(巖淵研究室)

大気海洋研究所の1階では、本物の海洋生物に触れることができる展示スペースが多く設けられ、小さな子どもたちで賑わっていました。2階では、大気に関する実験企画も行われていました。また、建物全体で「空と海の過去・現在・未来」というテーマでクイズラリーも行われていました。

大気海洋研究所には、寿司店「はま」があります。筆者が取材した日は多くの来場者が殺到し、正午ごろには1時間待ちという盛況ぶりでした。

カブリ数物連携宇宙研究機構

柏キャンパスの中央口から見て右手側にある、立ち並ぶ他の建物より相対的に小さく見える建物が東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)棟です。柏キャンパス公開当日そこにて実施された「Kavli IPMU研究棟ツアー」の様子を取材しました。

Kavli IPMUは「宇宙への根源的な疑問に答えるために設立された国際的研究機関」で、数学、物理学および天文学等の研究者が集い宇宙に関する研究が日々進められています。このツアーでは、理想的な研究環境を実現するためKavli IPMU研究棟に施された様々な工夫を知ることができるようになっていました。

まず図書室へ案内されました。そこには主に数学関係の洋書が本棚に並んでいましたが、なんとその本棚に工夫がありました。地震のときに蔵書が落下しないようにするための装置が取り付けられていて、東日本大震災のときも活躍したそうです。続いて明るい雰囲気の機構長室を訪れたのち、建物中央にある藤原ホールに案内されました。テラスからだけでなく天井からも光が差し込み、中央の柱にはガリレオ・ガリレイの言葉が刻まれたこのホールに、毎日午後3時からティータイムとして建物内の研究者が集まるそうです。テーブルのそばには黒板が設置され、お茶を飲みつつ研究者の間で宇宙に関する議論に花を咲かせられるようになっていました。

そのホールを取り巻くように、各居室がらせん階段状に配置されていることはKavli IPMU研究棟の最大の特徴と言っても過言ではないでしょう。これは「研究者はみな平等である」との理念に基づいているそうで、Kavli IPMU専任研究者の居室も短期滞在の研究者の居室もすべてらせん状になった1つのフロアにありました。各居室はそれほど大きくないという印象がありましたが、研究が滞りなく進むよう、「書類が風で窓の外に飛ばされてしまうのを防ぐ」といった細かいところまで工夫がなされていました。

最後に、古代ヨーロッパの野外劇場をイメージしてこれまた階段状に造られたという屋上へと案内されました。そこから柏の葉の市街地が見渡せるのはもちろん、両隣の建物と高さを合わせるためのひさしが特徴的な形をしているため、夜にライトアップされると市街地の方から見てもよく目立つとのこと。そのひさしの下には透明な板が立ててあり、スクリーンを設置できるようになっていました(風が強く吹き付ける土地柄もあり一度も実施されたことはないそうですが)。

ここで紹介した以外にも、地球環境に配慮した効率の良い空調・照明が使用されているなど、Kavli IPMU研究棟には非常に多くの工夫が随所に施されていました。このツアーは、そうした工夫の数々に感銘を受けるとともに(理系の学生として将来過ごすことになるのかもしれない)毎日の研究生活を想像できる非常に良い機会となりました。

参考URL:http://www.ipmu.jp/ja

新領域創成科学研究科 環境学研究系

人間環境学専攻産業環境学分野(大和裕幸・稗方和夫研究室室)

ゲーム機で用いられる3次元センサーKinectで遊べる装置を公開していました。この研究室では、3次元センサーを用いた船の外板の状態の診断などに取り組んでおり、Kinectは3次元センサーを身近に体験してもらうためのものだそうです。この他にも最新の科学技術を産業に応用するための取り組みを積極的に推進していて、研究室内ではオンデマンド交通システムについて説明する映像も流れていました。

徳永研究室「地下水は地面の中をどう流れるの?」

徳永研究室による実験・展示発表が行われていました。

会場は主に3つのブースに分かれていましたが、1つ目のブースでは「そもそも水はどういう原理で地中を流れているのか」というテーマで実験が行われていました。実験に使われた器具は、土が詰められた管の両端にボトル状の容器が2つ違う高さで取り付けられたものでした。高い位置にある方の容器が山、低い位置のものが海を表しています。高い位置の容器に水を注ぐ(これは山に雨が降ることに対応します)と、水は管を通って低い位置の容器に流れ出していきます。このとき、管に上向きに取り付けられた4本のストロー状の細い管の中に水がせり上がってきます。よく見ると、その水位はそれぞれ違い、高い位置の容器に近いほど高く、低い位置の容器に近いほど低いのです。ここから、土の中では地点によってかかっている圧力が違い、その圧力の差によって水が山から海へ流れていくことが分かるとのことでした。

さらに2つ目のブースでは、逆さまにしたペットボトルに海岸や田んぼなど数種類の場所の土を詰めて上から水を注ぎ、下から水が出てくる速さを比較する実験を行っていました。それぞれの土の透水性の違いが目に見える形で示されていました。水は電流と同様、水を通しやすい土壌の方に多く流れる性質があり、透水性を調べることは廃棄物を埋める場所の選定をはじめ多くのことに役立つとのことでした。

地中に埋められる人工物の多くには、金属が含まれています。3つ目のブースでは、そういった金属のうち、金と鉄の原料となる鉱石が展示されていました。展示されていた金鉱石は、地下のマグマの成分が熱水に溶け出し、その熱水が地中を上昇してくる過程で水中の成分が析出して形成されたものだとのことでした。鉄鉱石の方には縞状の模様があり、海水中の植物の光合成が盛んな時期に水中に酸素が溶け込み、鉄のイオンが酸化されてできた酸化鉄が海底に堆積したものだそうです。なお、なぜ縞状の模様となっているかについては未だ解釈が定まっていないとのこと。

科学をどう生かしていくかについて1つの好例を見ることができました。

なお、写真中の赤い線は水位の違いを示すために筆者が書き加えたものです。

新領域創成科学研究科 基盤科学研究系

新領域創成科学研究科基盤科学研究系は、「未来への道―サイエンスが切り拓く―」と題し、研究室ごとに体験用の装置を設けたり、実験施設を公開したりしていました。

熱電材料:エネルギー・環境問題へのキーテクノロジー(木村薫研究室)

温度差と電流を相互に変換できる板状の物体を展示していました。板の中に含まれているビスマスとテルルによりエネルギーを変換することで電池として機能します。板に手を当てて鉄棒人形を動かす、板に電流を流して表面の水滴を凍らせるなどの実演が用意されていました。実演は子供たちに人気で、研究室には常に来客で賑わっていました。

触覚の不思議な体験(篠田裕之・牧野泰才研究室)

振動と光との関係によって触覚を感じさせる装置を体験できるようになっていました。具体的には、傾けると中で球が転がっているように感じる棒、ビー玉が入っているように感じるコップ、手の上をトカゲが歩いているように感じるプロジェクター、実際に押したように感じる空間上スクリーンがありました。中でもプロジェクターは机の表面に上から光を投影する珍しいもので、手を机に置くことで触覚が生じました。これは光を出すと同時に空気を振動させるという仕組みです。子供から大人まで様々な方が体験を楽しんでいて、触覚についての興味が深まる企画でした。

超電導応用工学〜地球の未来を担うテクノロジー〜(大崎博之研究室)

金属には冷却すると電気抵抗が0になるものがあります。この現象は超電導と呼ばれ、大崎研究室はこれを目で見て感じられるような装置を展示していました。いずれの装置も超電導で磁気を発生させることによって、磁気浮動やリニアモーターの仕組みを実際の運動を見ながら学べるようになっていました。高校生を中心に多くの来客で賑わっていて、超電導に関して楽しみながら学べる企画となっていました。

宇宙とラボをつなぐプラズマ物理〜先進的核融合の挑戦〜(吉田善章・西浦正樹研究室)

超高温のプラズマを発生させる装置「RT-1」を公開していました。プラズマとは気体中の原子が電離した状態であり、環境と反応してエネルギーを生成します。RT-1の中には巨大なコイルがあり、それによってプラズマを拡散させています。装置の動きは遠隔操作されています。実験室は公開されている実験棟の部屋の中でも2番目に大きく、迫力がありました。高校生だけでなく、社会人の方も多く訪れていました。研究室は装置の公開のほか、研究に関するポスターや装置に関する動画も展示していました。なお、その動画は研究室のウェブサイトで閲覧できます。 (http://www.ppl.k.u-tokyo.ac.jp/

経済的な人工太陽は完成できるか?〜UTST球状トカマク実験と国際COE拠点〜(小野靖研究室)

水平と垂直の二方向からプラズマを発生させて閉じ込める装置を公開していました。核融合発電を実用化するにはプラズマを小型化する必要があり、UTST球状トカマク実験はそれを目的としています。装置は複雑な構造をしていて、プラズマ技術がいかに高度であるかを実感できました。スタッフの方も丁寧に説明してくださり、プラズマや核融合発電の可能性を理解しやすい企画となっていました。

先進スマートデバイスの実証研究〜将来の電気エネルギーシステムを創る〜(横山明彦・馬場旬平研究室)

電気使用を効率的に制御するための装置の実物が公開されていました。中でも印象的だったのは太陽電池で作られる電気を変換する装置です。太陽電池で作られる電力量は常に変動するため、スマートデバイスのプログラムが随時作動して電力を最適化します。今回の展示ではプログラムの動作状況がパソコンに表示されていました。他にも、給湯に関するものなど住宅の電気インフラの状況を計測・制御する一連の装置の実物があり、計測のシミュレーションもポスターで展示されていました。スタッフの方も質問に気軽に対応してくださり、スマートデバイスの実用性を実感できる展示となっていました。

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掲載日:15-12-20
担当:望月洋樹
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