平成26年度入学式

東京大学の入学式は例年、創立記念日の4月12日に行われるのですが、今年は12日が土曜日だったので、一日早く4月11日に日本武道館で行われました。天気がよく桜も満開で、華やかな雰囲気となっていました。

応援部

式が始まる前から応援部のデモンストレーションや音楽部管弦楽団の演奏が行われ、その間に新入生が会場へと集まってきました。10時20分に管弦楽団がワーグナー作曲の「ニュルンベルクのマイスタージンガー前奏曲」を演奏して入学式が始まりました。その後檀上列席者の方々がアカデミックガウンに身を包み入場される様子は、多くの新入生を驚かせていたようでした。檀上列席者の紹介では、国際司法裁判所前所長の小和田恆氏の名前が呼ばれたときに驚きの声があがりました。開式の言葉の後、コール・アカデミーとコーロ・レティツィアによる「大空と」の合唱が行われました。

濱田純一総長

合唱の後は、濱田純一総長が式辞を述べられました。濱田総長は、知的な面でも社会的な面でも新しい環境である大学での生活に積極的に関わってほしいと、「自己投企」という哲学用語を用いて新入生に話されていました。これから主体の中身を作っていくことが求められている新入生にとっては、「主体性」よりもこの言葉のほうがふさわしい、と総長はお考えのようです。この「自己投企」に応えるための取組みとして、総長は平成27年度からの実施が目指されている教育改革に触れました。この概要を示したパンフレットは来場者に配られていました。総長はこのような取組みが基盤となって「よりグローバルに、よりタフに」という東大生の姿が実現することを期待されているそうです。学生が「自己投企」した具体例としては、入学直後から1年間特別休学をして国内外でさまざまな活動をする制度であるFLYプログラムの参加者の感想が紹介されていました。全体として、総長のこの大学や新入生に対する思いが、独自の具体例によって込められた式辞となっていました。

石井洋二郎教養学部長

続いて石井洋二郎教養学部長の式辞です。学部長は教養学部の基本的な教育理念である「リベラルアーツ」が人間を自身の限界から自由にするものだと述べられました。その限界として、知識、経験、思考の3つの限界を紹介しました。中でも思考の限界に関して厄介なのは、意図せずに他者の言葉を反復し、自己の思考だと錯覚してしまうことだそうです。学部長が、「自分が話している今、その内容を目の前でSNSを通して発信している人がいるかもしれない」と話すと、大きな笑いが起きました。学部長は単に自分の話を真面目に聞いてほしいからこう話しただけではなく、SNSによる情報は刹那的に生産され、瞬時に流通する定型的な記号の群れなので、加速度的にこの錯覚を増殖させるのではないか、と心配されているのです。学部長は、思考の限界を解決するための方法として、読書によって他者の思考に身を浸すことを提案されていました。逆説的なようですが、これによって初めて自分だけの言葉を鍛えることができるそうです。学部長は最後に、ここにはない自分に向けて精神を開くことが「リベラルアーツ」の本質だとまとめ、いくつもの壁を突き破りながら自らを不断に更新していく「教養人」になることを目指してほしいとメッセージ送ってくださいました。

小和田恆国際司法裁判所前所長

次に小和田恆国際司法裁判所前所長からの祝辞です。小和田氏は社会のグローバル化においてどのような姿勢が大切なのかについて話されました。まずご自身の「グローバル化」に関する考えを紹介されました。小和田氏によれば、グローバル化とは社会同士が国境で接するだけでなく、国境を超えて世界が一体となって一つの社会が生まれることだそうです。次にご自身のケンブリッジ大学への留学経験に基づいて、留学によって価値の相対化ができることを示されました。小和田氏は留学を「他流試合」に例え、異なった文化との直接の接触を通じて、自分の社会で常識とされていることが実は習慣的な約束事に過ぎなかったのだということを悟る経験が、留学から得られるものだと述べられました。最後に広い体験と深い思索に基づいた人格と教養がグローバル化において大切だとまとめ、同じ地球社会に属する人たちのために何をすることができるのか考える姿勢を養ってほしい、とメッセージを送られました。

宣誓の様子

入学生の宣誓は文科一類の中西友梨奈さんが行いました。中西さんは幅広い知識と柔軟な思考力を身に着けたいと述べ、価値観の異なるさまざまな人々との出会いを大切にし、その交流を通して培ったものを将来社会に還元したいと述べました。そして、そのためには仲間、先輩、教職員の力を借りなければいけないと語りました。最後に、保護者をはじめとする今まで自分たちを支えてくれた人々への感謝の気持ちを表しました。

最後に管弦楽団の伴奏、応援団のエールとともに、コール・アカデミーとコーロ・レティツィアに合わせて会場全体で「ただ一つ」を合唱し、式が締めくくられました。全体として厳かな雰囲気で入学式が進みました。新入生にとって、東大に入ったことを実感し、気持ちを新たにする入学式となったのではないでしょうか。


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担当:UT-Life