「いい図書館」のために

膨大な数の蔵書を擁し、大学の知を象徴する大学図書館。本を読んだり勉強したりと普段から利用する学生も多いと思いますが、貸出返却カウンターの裏でどんな人がどんな仕事をされているのかを知る人は少ないのではないでしょうか。今回は、東京大学駒場図書館の茂出木理子図書課長と合田美惠子専門員にお話を伺いました。

―お仕事の内容を教えてください。

左から茂出木さん、合田さん
(左)合田美惠子専門員、(右)茂出木理子図書課長

茂出木 学生さんの目にふれるのは、カウンターでやりとりをする仕事がほとんどだと思うのですが、実は図書館の仕事というのは、カウンターの裏側の地味で泥臭いものが8割くらいで(笑)、目にふれているカウンターの仕事というのは2割くらいかもしれません。
この図書館には今40名弱のスタッフがいます。「図書係」には10数名のスタッフがいますが、ここでは、本を買ったり、そのために書店さんとやり取りをしたり、支払い処理をして図書館に入れる「受け入れ」という作業をしたり、本を検索するOPACというシステムのデータ入力をしたりしています。事務室の奥の係(雑誌係)では、毎日届く雑誌の受け入れをしています。図書館に並ぶ本や雑誌以外の各研究室や先生方の部屋に置く資料の受け入れ処理やデータ入力も図書館で行っていますので、それらの仕事だけでもけっこうな労力をかけています。

本棚

最近ですと、紙媒体ではない電子書籍、雑誌でも電子ジャーナルというのが出てきているので、そういったものを使えるようにするという仕事も増えてきました。それから、後ろをご覧になるとわかりますが(右写真)とても古い本がこの教養学部・総合文化研究科にはたくさんあるので、そういう貴重な本の登録をして、そしてOPAC用にデータを入力するということもやります。ほかにも、他の大学図書館と本やそのコピーをやり取りするのも私たちの仕事です。
外からはわからないかもしれませんけど、こういう風に裏で支えている人が多いというのは図書館の特徴かもしれませんね。

―月に何冊くらい新しい本が入ってくるんですか?

茂出木 駒場図書館で学生のみなさんが普通に使われる本で、年間2万冊から2万5000冊ぐらいです。

合田 同じ規模の大学図書館と比べて冊数は多いです。ここは学生さん向けの一般的な本を置くので単価の安い本が多いということも理由としてあるかもしれません。

茂出木 年間2万冊の本を受け入れるために、あまり使われない本を保存書庫に移動させたり、古い辞書などデータベースで使えるようになったものを整理して、書架に余裕を作って新しい本を入れていったりしています。

合田 駒場図書館で廃棄することになった本は、他の図書館にお譲りしたり、学生さんが使えそうなものは、図書館入り口に設置した「ご自由にお持ち帰りくださいコーナー」に置いて有効活用をはかっています。

茂出木 この図書館は建ってまだ10年くらいなので、まだ少しは書架に余裕があるんです。でもいずれ本でいっぱいになるので、使いやすい書架のために新しく本を入れるときに書架の本を入れ替えたりずらしたりという作業は日常的にやっています。

―新しく入れる本はどのように選んでいるんですか?

茂出木 主に先生方と、ジュニアTAの方で選書を請け負ってくださっている方たちと、それと私たち図書館の職員という三者で選んでいます。

合田 小説とかが入っていないのはお気づきだと思います。その人の著作として完成した全集ものは入れるけれども、個々の単発的な小説は入れないというのが駒場図書館の選書の基準にあります。

茂出木 現物の本を見ながら選んだり、書店さんが送ってくるリストを使ったり、最近だとAmazonで目次を見たりといろいろな方法で本の内容を確認して、選んでいます。

合田 学生さんからリクエストがくることもありますね。

茂出木 選書基準はどこの大学図書館でも作ってはいますが、やっぱり一番難しいところですね。人によって入れるべきか入れなくていいか、先生の間で意見が分かれることもあるので。全員の意見の一致をみるというのは難しいです。だからなるべく多くの人の目で見て、大学図書館にとって必要な本をなるべく「落とさないようにする」ということが大事かなという気はしますね。
文庫化したり重版されたりするベストセラーのような本と違って、学習用とか研究用の図書ってもともとあんまり数は出されなくて、そのとき買わないと手に入らないということもあります。どうしてもというときは古本屋で買うこともあります。シリーズもので一冊だけ抜けているなどということがあったとき、新しいものが買えればいいですけど、なかなか買えないときには古本屋で買って埋めるなどしています。

―図書館で働かれるなかで特に大変なことはありますか?

図書がかりのかたの職場

茂出木 「いい図書館」っていうのは正解がありません。大学もどんどん変わっていますし、例えば21KOMCEEのような新しい教室ができるということは、授業のやり方も今まで通りではなくどんどん変えていこうとされているわけですよね。そうすると当然、大学図書館も10年前によかったねって言われていたことを今もずっとやっていても良くはならない。ということは、今、何をやるべきかということを図書館職員である私たちも常に考えていないといけないと思います。これはとても難しい問題ですね。
加えて、この図書館は毎日3000人、試験期間だと5000人もの学生さんが利用されるわけですけれど、とにかく毎日を無事に安全に開館しなければいけないというのもあります。かつ、毎年入ってくる2万冊の本をきちんと回していくために、先にお話しした通り、書架にどう入れていくかなどといったちょっと先のことを考えながら計画していく、これは図書館だからというわけではなくどこの職場も同じだと思いますが、先を見ながら一日一日をきちんと運営していかないといけません。

―図書館を利用する学生さんにメッセージをお願いします。

図書館の風景

合田 図書館のことを好きになって、学生生活のなかでこの図書館に来たことが思い出になるような使い方をしてほしいですね。職員にとっても、そういう風に役に立ったというのは嬉しいことです。

茂出木 学生さんが駒場での思い出のひとつに図書館を挙げてくださったらとても嬉しいです。それに加えて、大学って、高校までと違って、自分で勉強していく場だと思います。大学図書館もそういう場だと思うのです。大学図書館にはいろいろな本があって、それらは古今東西の知恵・知識の集大成だと思います。ですので、図書館のなかにいるときにどれだけ自分が謙虚になれるか、ということが問われていると思います。
謙虚さということに関して、お仕事でお会いする大学の先生方って、研究者として当たり前かもしれませんが、どれだけ研究を極めても、その先をもっと知りたいという思いで研究を続けていらっしゃるのだということに私たち職員も刺激を受けます。また、学生さんを教えながら、教員も学生さんから学ぶことはたくさんあるとおっしゃる方が多いです。私たち図書館職員にも思いやりのある態度で接してくださいますし、お話ししていてもなんて優れた方なのだろうって感銘を受けます。そういう方ってそろいもそろってすごく謙虚でいらっしゃるんですよ。
図書館って、そういう謙虚さを思い出させてくれるところだと思うのです。たくさんの本に囲まれて、自分の知らないこと・知らなきゃいけないこと、知ろうと思えば示されていることはたくさんあるのだなあ、ということを学生さんにも素直に感じてもらいたいですね。特にこの駒場図書館は、入学してまず利用するところですよね。大学が高校までとは違うっていう、ある意味ショックをうけるところだと思うのです。疲れたときにゆっくりするだけでもいいので図書館に来て、そういう謙虚さというのも学んでほしいと思います。

プロフィール

茂出木理子(もでき りこ)

図書館情報学専攻。東京大学理学部図書室に採用後、総合図書館、情報基盤センター、国立情報学研究所、お茶の水女子大学附属図書館等に勤務。平成22年4月から駒場図書館図書課長を勤める。図書館サービスや運営について図書館総合展等での講演経験も多数。
趣味は掃除とショッピング。

合田美惠子(ごうだ みえこ)

神奈川県横浜市出身。大学では図書館学を学んだ。
卒業後、東京大学生産技術研究所図書室に採用された後、学内の様々な図書館・室及び独立行政法人国立女性教育会館情報課に勤務。平成22年4月に柏図書館から現在の駒場図書館勤務となる。
趣味は演劇鑑賞・手芸・ハイキング等。

 

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掲載日:12-01-18
担当:平山いずみ
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