日本再生へ

 チームラボの目的は「日本再生」。情報革命によってもたらされる「新しい価値を創造できる人が美徳とされる、新しい美意識」について考える若き社長。周囲の人間によると彼は、「変態」。


猪子寿之さん

日本再生へ

 僕は小学校の時すごくやる気のない小学生で、夢もなくって、同じ学年の子が将来はサッカープレーヤーとか花屋さんとかを夢見ていた頃に、自分は家が歯医者だったからそのまま歯医者になると思っていたのね。「10年後の自分はなにをやっている?」と小6の時に訊かれて、22歳の自分は「歯科大学に通っていると思う」って、可愛げもなく答えていたね。そんなさむい、現実感溢れる子供だったよ。

 ところが中学校の頃、「日本を再生しろ」って電波が届いちゃったんだ。よくわからなくて、面倒だって思った。だけれど、僕は届いちゃったっていうファクトに素直だった。

 高校の時、日本再生のためにマーケットにコミットしようと決めた。なぜ政治じゃなくマーケットで日本が変えられるかって? 日本は民主主義社会だから、マーケットにニーズが生まれることで社会は変化する。大衆が新しいものを求めることから政治が変えさせられるんだよね。政治が変わるだけでは社会の全体の変化は起こせない。大衆の動きが社会を変えるんだ。だからマーケットを選んだ。

 だけどその後、大学入学前の春にインターネットを知ってしまった。すぐにこれは奇跡だ、と感じた。体制じゃない側の人間が自由にメディアを持てるのは人類史上初のこと。インターネットはすごい社会変化を起こすと思った。

チームラボの会社受付。左は懐かしのファミコン。右のCDジャケットは社員一人一人の写真になっている。

 この大衆の自由とはなにかといえば、例えば明治維新を考えてみるとわかる。坂本竜馬が明治維新を起こしたとは実は言えないと思う。明治維新がなぜ起こったかっていうのはマーケットの話で、当時鉄砲が技術革新によって、すごい価格下落が起こったことが原因だよね。誰でも買えるくらいまで鉄砲が安くなった。当時初めての株式形式の民間企業、海援隊が貿易を通して体制じゃない側に鉄砲を売りまくった。大衆は鉄砲を手に入れたことで、それまで鍬で戦っていたのではかなわなかったところを、革命を起こすことに成功したんだ。

 これと同じことで、インターネットで我々は鉄砲以上のものすごいものを手に入れた。これは、社会変化が起きる、すごいインパクトを持つものだよ。全てのものがひっくりかえる。このインターネットを知った時僕はそれまで目指していた体制側には興味を失って、いろんな情報を持てる体制ではない側に立とうと思った。それでインターネットに拘る仕事にしようと思った。

 そこから起業した理由というのは二つあって、ひとつは自分は、脳の構造上物事や作り方を整理して論理的に考えるプログラミングが苦手だったこと。もうひとつは仲間と一緒にゼロからはじめてみたかったことがある。人生なにが楽しいかって考えたとき、プロセスの全てを共にすることがすごい幸福だと思う、だから起業したんだ。

新しい価値

 日本が再生できれば、単純に日本の文化は世界に浸透していけると思うよ。文化が輸出されることで、単純に日本のブランドがあがるっていう相乗効果があるんだ。たとえば、ハリウッド映画を通してハーレーのようなバイクが流行るみたいな効果だね。文化が浸透するっていうのは、あるライフスタイルへの憧れが生まれるってことだよね。新しい価値ができるんだ。

チームラボのオフィス

 日本人自身は日本文化のバリューが見えていない。単純なことなのに。普通に考えれば分かるよ? 例えば夏目漱石よりドラゴンボールが明らかに流行っている。だって、ああいうアニメはコンテンツ自体のパワーがありすぎて海外で勝手に売れ出したんだ。なのに国内での文化的評価は低い。その原因は、インテリ層が西洋文化をあらゆる面で絶対視しすぎていることがある。思い込みっていう部分が強いと思う。例えばさ、貿易赤字のアメリカの経営手法の教育を受けに行くMBAってあほらしくない?統計的に見て、負けているところから学ぶのは明らかにおかしい。もっと普通に論理的に数字で考えるといいんだよね。

 僕はどんな性格かって聞かれると、普通って答える。普通でいて、普通に考えたうえで新しい価値を創造でき、その価値を評価することが出来る、そんな美意識が持てるといいね。会社について言えば10年後は、世界に認められる格好良い技術企業になっていたい。また、在籍することでエンジニアがエンジニアでよかったと思う企業になりたいとも思う。


猪子 寿之氏: チームラボ株式会社 代表取締役社長
1977年徳島市出身。東京大学工学部計数工学科卒業。東京大学大学院学環情報学府中退。学生時代に、友人とファッションブランドFRIENDICK設立、ビームス等で販売開始。
また、学生時代の様々な活動と同時にチームラボを創業、代表取締役社長に就任。
株式会社NKB(ぐるなびの親会社)の取締役IT事業担当、ジョイジョイ株式会社の取締役COO等を兼任している。

チームラボ株式会社

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掲載日:05-10-05
担当:熊沢直美
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