'06立花隆ゼミ特別対談企画

「瀬名秀明×櫻井圭記」

 立花隆、といえば、著名なジャーナリスト・評論家である。その立花氏が長をつとめる「立花隆ゼミ」が、五月祭で対談企画を立案したらしい。立花氏が誰かと何かを語るのだろうか…?

 告知ページを見てみると、そこに立花氏の名前はなかった。パラサイト・イヴなどの著作で知られる作家、瀬名秀明氏と、『攻殻機動隊』というTVアニメーションの脚本をされている櫻井圭記氏の対談──テーマは「オリジナルとコピーのはざまで─ゴーストが宿る場所─」。

 こう言っては何だが、怪しい。'06立花隆ゼミは、科学技術に関する総合Webサイト『SCI(サイ)』を立ち上げ、日々そのコンテンツの充足に努めていると聞いたが、科学とこのテーマはどう関係しているのだろうか。この疑問を晴らすべく、対談企画の責任者である加藤氏に話を伺った。


──オリジナルとコピー、とは?抽象的でよく分からないのですが…。

人間は、昔から自分の姿に似たものを作ってきました。人形であったり、人型ロボット(アンドロイドやガイノイド)であったり。子作りをそのもっとも原始的な段階として捉える人すらいます。また、神様の偶像だって、たいてい人の形をしていますよね。日本人なら、きっと誰でも鉄腕アトムを知っていると思いますから、それへのぼんやりした憧れを思い浮かべていただけると分かりやすいのではないでしょうか。このように人が自らの似姿を作る所作を、「オリジナルがコピーを作っている」と捉えて考察を加えていくのが今回の対談の出発点です。

──なんだか難しそうですね。

と、思いますよね?確かに難しいんですが、対談ではこのテーマをできるだけ視覚的に分かりやすく考えていくために、映画『攻殻機動隊』の続編、『イノセンス』を素材に選んでいます。また、対談に関係するさまざまな資料にあたって、60ページに及ぶ冊子を作りました。対談が終わってから読み返すと、きっと理解の一助にしていただけるでしょう。冊子には、『イノセンス』の監督をされた押井守氏の巻頭言や、立花隆氏による書き下ろしゼミ紹介なども掲載しています。

──サブタイトルの、「ゴースト」とは?

「ゴースト」は『攻殻機動隊』の原作漫画を描かれた士郎政宗氏が作中で提唱した概念で、人間にはあってロボットにはないものです。漫画の舞台では人体のサイボーグ化が当たり前になっており、色んな情報がネットを通じて脳に直接流れ込んできます。情報が今以上にたやすくコピーできるようになっているんですね。記憶すらその例外ではありません。そんな中にあって、「ゴースト」だけは「コピー」しようとすると失われてしまう。具体的には、「オリジナル」である人間の中身を人型ロボットに「コピー」しようとすると、人間が壊れてしまう設定になっています。漫画の主人公の草薙素子という女性は、脳以外のほとんどをサイボーグ化していますが、自分に宿る「ゴースト」の存在を信じています。ただ、今回の対談ではもう少し間口を広げて「ゴースト」を捉えます。

──具体的にはどんなことが話されるんでしょうか。

人間は、自らの似姿、つまりロボットをどんどん精密に作りあげてゆくことで、人間とロボットの境界を曖昧にしています。人間が人間たるゆえんと考えられてきたさまざまが、実は機械で代替可能であるという事実ことが、どんどん明らかになってきているのです。例えば、人間の脳の容量は最低10テラバイトと計算できる、とか、そんな研究が今、ごく大真面目に行われています。オリジナルvsコピー=人間vsロボット、そして、その間に横たわるゴースト…という構図を端緒に、文字というコピーの登場が会話というオリジナルを変えてしまった例を取り上げます。さらには、ネットの常時接続が当たり前になったとき引用がコミュニケーションを変えるかも?…という近未来のコミュニケーションのありようについてもお話いただけるかもしれません。「ゴースト」は、この対談では、オリジナルとコピーの間に横たわる差異、違和感の根源を指します。カタい話ばかりだと疲れますから、対談者のお二人が共に大学生の頃創作活動を始めたことについて少しつついてみるかも知れません(笑)。

──そういえば、科学との係わりは…?

痛いところをつかれたかな(笑) ですが、ロボティクスの進歩はもろに科学に関係してきますし、その結果が社会的な意味を持ちうる以上、いわゆる文系的な考察も科学には欠かせません。むしろ、現代の自然科学は哲学から生まれてきたわけですし、原点に立ち返る意味で今回の対談を企画しています。


最初頭に何個も浮かんでいた「?」が、話を聞いているうちにどんどん「!」へ変わった。立花隆ゼミは9年前にも開講されていて、そのときのテーマは「調べて、書く」だったそうだ。60ページに及ぶ冊子ができあがっていることを知って、立花隆ゼミの根本はずーっと変わらないのかもしれない、と思った。それは、飽くなき知的好奇心(「?」)によるインプットを、色んな人に面白い(「!」)アウトプットに繋げるという考え方である。ともかくも、こんなに面白そうな対談を企画立案できる立場にいる立花隆ゼミ生が、少しうらやましくなった。


瀬名秀明×櫻井圭記(五月祭特別対談)
場所: 5号館51講義室

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掲載日:06-05-24
担当:大道亮
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