Physics Lab.2010

 2年連続でMFアワーズ(※)を受賞している理学部物理学科。今年のPhysics Lab.2010では何をするのかその企画内容とその舞台裏を代表の川西裕基さんに伺った。

(※)MFアワーズとは五月祭の企画の中で特に優れたものを、来場者の投票で決定するコンテストです。


まず企画内容を教えて下さい。

理学部物理学科五月祭企画
代表・川西裕基さん
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 私たちは物理に関する展示発表、研究を行っています。

今年は7つの班に分かれて、それぞれ異なるテーマで活動しています。順に挙げていくと、生物物理班、物性をやっている一次元電子系班、相対論とか流体力学のアナロジーをやっている流体ブラックホール班、どうやって火の玉ができるのかなどその名の通りプラズマをやっているプラズマ班、シュミュレーション一般を行い、今年は特に楽器シュミュレーションや流体の流れに関するシュミュレーションをやろうとしている計算機班、リニアモーターを使って実際に電車を走らせようとするリニアモーター班、宇宙線を観測する宇宙班があります。最後の宇宙班は小柴さんがカミオカンデで検出したニュートリノの仲間のミューオンを検出してそれが本当にミューオンかという同定作業をやっています。

物理は難しく取っ付きにくいというイメージがありますが?

 確かにそういうイメージはありますし、私たちが扱う内容も年々難しくなっていています。そこでそれを一般の人にいかに分かりやすく伝えるかということですが、まず来場者の方に各班の内容を簡単に見開き1ページでわかるようにまとめた冊子をお渡しします。そこではごくごく簡単な定性的な内容を、なるべく数式などは使わずに理解できるようにしています。「ここの班ではこういう研究をやっていてこういうものが見えますよ」というように中学生や高校生でも分かるような内容にしています。そして当日パネルでの展示をするのですが、そこでは各班の班員が来場者の方のレベルにあわせた説明を行います。実際プラズマの話などを本気でしだすと大学生でも分からなくなることもあると思います。しかしそれだと中学生や高校生に満足してもらえないので、実験などを多くとりいれていきたいと思っています。例えばプラズマ班だと当日実際に放電をして、星形のプラズマなどを作って見ていただく予定なのですが、それを見て「綺麗だな」と思っていただければと考えています。他にも生物物理班ではギムネマ茶という飲むと前後で味覚、具体的には甘みが変わってくるお茶を飲んでもらうところがあります。そういう体験型の実験などを多く取り入れて、一般の方にも分かっていただくまでは至らなくとも「物理って凄いな」と思っていただければと思っています。

テーマはどのように決めていらっしゃるのですか?

 去年の五月祭が終わったぐらいから「来年の五月祭でやりたいことはないか」と僕が募集をかけると何人かが「こういうことをやりたい」と言ってくるんですね。その中から、物理学科からもらった60万という限られた予算の中で、また難しすぎて失敗することがないよう成功する見込みがある実験を選びます。しかし一方で学生実験のように決まりきった内容で結果も分かっているものをやっても意味がないので、未知の研究対象を選んでいきます。初めは「こういうことをやりたい」と言っていってくるんですが、「それは予算面で厳しいんじゃないか」といったのツッコミを入れつつ微調整をしていって最終的にテーマが決まるのは9月ごろですね。

結果が分かりきっている一般的な学生実験とは違うということでしたけれども、それでは新しい内容のこともやっているということでしょうか?

 そうですね。例えば新しい実験というと、生物物理班では渡り鳥などが方角を判別するのに用いる磁覚を持った細菌、走磁性細菌が磁場の中でどういう振る舞いをするかということをより定量的に調べようということをやっています。また一次元電子系班では、一次元電子系というものの性質を見てやるという新しい試みをやっています。線状の物質試料を作ってやると、そこの電子の相関関係が強く、普段と違った振る舞いが見えてくるのです。そこで磁場を外からかけたときにどれだけ磁化されるかという度合いの帯磁率などを調べています。その他流体ブラックホール班では、世界初の実験に挑戦しています。具体的には、ブラックホールというと何でも吸い込むというイメージがあると思うのですが、それを時間反転させてやると何でも吐き出すわけですよね。それをホワイトホールというのですが、それの古典力学での対応物が蛇口から水が出てくるときの波紋に対応するということが先行の論文で言われていて、それが本当にホワイトホールに対応しているのかということを実験で確かめようとしています。これは先行の研究で成功していないということを聞いているので、もし成功すれば世界初になると思います。このようにいろいろ新しいことををやっています。

新しい実験をやっているということは、成功するかも分からないし、その分苦労も多いのではないですか?

 もう苦労の連続ですね。実験を始動させるのは11月、12月、遅い班だと3月からになったんですけど、そうすると早速これが上手く行かない、あれが上手く行かないということが班長の口から僕に伝えられるわけですね。「もうこれ無理かもしれん」という声も聞かれました。しかしもうテーマは決まってしまったので、どうしようもありません。責任者だからといって、適切なアドバイスができて、「こういうふうに実験を組み直したらこういうふうに上手く行くんじゃないか」ということはできないんですね。やはり実際に現場で実験をやっている班長や班員の方が詳しいので、僕はそれを聞いて「頑張ってくれ」と言うしかなくて、なかなかもどかしい立場ではあるのですが……。ただ本当に困ったときには、教授をはじめ研究室のかたにアドバイスをもらって助けてもらえます。しかし基本的には学生の間で「これはこういうことが原因ではないか」ということで一個一個問題を解決していって上手くやっています。

来場者の方に見ていただきたいポイントはどこですか?

 展示内容はもちろん見ていただきたいのですが、展示発表している学生がいかに熱心に物理に興味を持っているか、そのオーラというかその気迫を感じ取っていただければと思います。できるならば当日の実験も見ていただきたいですし、物理学科の学生やその先の研究者や教授になるとどういう生活をしているのかという理物展示という物理学科の展示が実験とは別にあるので、それを見ていただいて物理学科や物理をやっている人がどういう生活をしているのかというのを見てもらえればと思います。

企画展示の狙いや目的は何ですか?

 それは2つありまして、1つ目は物理学科の学生にとって五月祭というのは優れている機会だからです。なぜかというと普段の授業や実験は与えられた課題をこなすだけのものなので、それについていろいろ考えるのは各人の自由なのですが、一からテーマを設定して、議論をして研究結果を導いて考察をするというのは、本当の研究者にならないとなかなかできないことです。しかも予算を与えられているのでわりと好き勝手できて、それでいて研究室の協力も得られて、本当に自分の好きなことができる恵まれた機会なので、この五月祭でしっかりとした研究発表をしていこうということでやっています。それとも1つは、やはり一般の来場者の方に物理に対して興味を持っていただきたいという強い思いがありまして、難しい内容をなるべく分かりやすく伝えるようにして――最近理科離れなどといわれていますが――少しでも多くの人に、物理だけなくサイエンス一般に興味を持っていただければと思っています。

昨年はMFアワーズの学術文化発表部門だけでなくMVPも受賞されていますが、今年の意気込みをお願いします。

 そうですね、2年連続でMFアワーズを受賞して、物理学科に風が吹いているので、ぜひ今年も受賞したいと思います。

それでは最後に一言お願いします。

 実際にこの展示を見ていただいて、「物理って何だろう」という疑問を持っていただければと思います。

実験設備

当日の予定

場所:
 理学部一号館1F
日時:
 全日

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掲載日:10-05-28
担当:稲森貴一
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