'11 オープンキャンパス

オープンキャンパス総合受付待ちの行列(安田講堂前)

12月23日、本郷キャンパスで、東日本大震災に伴う夏季の節電の影響で延期されていた「高校生のための東京大学オープンキャンパス2011」が開催されました。当日は寒い中、多くの高校生達が各学部や附属研究所などが主催する企画に参加していました。UT-Lifeでは、このオープンキャンパス当日の様子をリポートします。


文学部

場所: 法文二号館

文学部では、模擬講義・研究所見学ツアー・教員著書展示が並行して開催されました。

模擬講義は、まずは社会学の佐藤健二教授「ことばで伝える/ことばで感じる/ことばで考える」、次に倫理学の菅野寛明教授「日本人の自画像」、最後に在学生参加企画の模擬ゼミ「ゼミって何?」の順番で行われました。研究所見学ツアーは、心理学研究室・西洋史学研究室を回るルートと言語学研究室・文学部図書館を回るルートの2種類が準備されていました。時間が被ってしまうのでこれら全てに参加することはできません。悩んだ末、筆者は研究所見学ツアー後者ルートと菅野教授の模擬講義に参加してきました。

文学部

見学ツアーの受付開始直前に受付に着いたら、そこには既に長い列が。取材じゃなかったら参加できなかったかもしれません(笑)。まずは、法文2号館で文学部の先生たちの著作紹介。哲学・英文学・社会学・日本史などの分野別に本が並べられています。次の部屋で文学部ホームページの紹介があり、学部長の挨拶が7ヶ国語で書かれていました。

そこから外に出て法文3号館へ。最初に見学するのは地下の文学部図書室です。書庫を通って、閲覧室で図書館職員の方による説明を聞きます。最後に川端康成の実際の卒論を回覧、名作とされる作品の著者と同じキャンパスで学ぶということにはなんともいえない感慨があります。

文学部

次に言語学研究室。小林正人准教授のお話と、所属学生のミニ授業です。地方のアクセントを研究されている学生さんが、参加高校生の「端が折れる/橋が折れる/箸が折れる」の発音で出身地を言い当て、一同感嘆しました。

法文2号館に戻って、解散。参加された高校生の方にお話を伺うと、高校とはレベルの違う大学図書館の蔵書量・可動書架の仕掛け、言語学研究室でのアクセント研究の専門性に感動されたそうです。やはり実際に訪れてみないと知ることのできないことは多いですね。

文学部

そして、菅野教授の模擬講義。法文2号館2階の大教室はたくさんの人で埋まっていました。まず菅野教授は、文学部の講義の進め方についてお話しされました。100分構成の授業で、ネタとなる資料やエピソードの話と、その背景・位置づけ・根拠・問題提起などの説明・議論がなされるそうです。

今日の講義は、配られたレジュメに沿って、東大文学部倫理学科を創設した明治の学者・和辻哲郎の風土論を中心に進められました。高校倫理では和辻は風土の三類型を唱えたと丸覚えするかもしれませんが、菅野教授によると大事なのはその類型ではなく、「風土」というものを哲学的に考察したことこそが重要なのだそうです。倫理思想とは「自分が何であり、何を望んでいるか」を認識すること、いわば日常生活の目標です。しかしその「主体」性は、その人個人だけによって決まるものではなく、その地域で長い歴史の中で形成されたものなのです。

和辻の三類型を、自然・自己形成・神を軸にして説明してから、話は日本人の自己認識に移りました。神話や歴史的エピソードが、日本的特殊性の顕現だというのです。古代日本の統治者が持つとされる鏡と刀は、鏡が同情、刀が武勇という、日本人が重視してきた「情」の象徴なのだそうです。

最後に結論として、菅野教授は文系の学問を「人類の枝分かれと再会」と表現されました。和辻の言葉にあるように、人類の倫理思想というのはもとはひとつで、現在の思想文化の多様性はそれが色々な場所で色々な顕れ方をしているのだというのが基本的な考えです。その個別の特殊な顕現を研究することで、その根にあるひとつの普遍的な倫理を探ろうというのが文系の学問だということです。

この模擬授業でも、終了後に参加者の高校生にお話を伺いました。高校の授業では普段やらないようなこと、日本人についての深い考察が面白かった、また具体的にどんなことをやっているのかよくわからなかった文学部の実態を知ることができてよかった、ということでした。それは筆者もまったくの同感で、文学部の研究の一端に触れられる最高の機会だったと思います。


担当: 平山いずみ *

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