ナノテクノロジーで創る「魔法の弾丸」:がんの標的治療への挑戦

25日14時30分からは片岡一則先生による新しいがん治療法とそれにまつわる研究成果についての公開講座がありました。

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タイトルにもなっている「ナノテクノロジー」の「ナノ」メートルは、自然界で例えると、ウイルスや微生物の鞭毛モーターくらいの大きさです。ナノメートルとは分子が集まって自己組織化し機能する最小単位の大きさといえます。そして、片岡先生は必要な薬物を必要な部位・必要な時間に作用させるためのシステムであるドラッグデリバリーシステムのうち、高分子ナノデバイスを「魔法の弾丸」と称しています。がん治療の高分子ナノデバイスは、親水性連鎖であるポリエチレングリコールや疎水性連鎖ポリアミノ酸でできた高分子に抗がん剤を取り込ませて自己組織化させてミセルという直径数十〜数百ナノメートルの粒子にして、血管から選択的にがん細胞に取り込ませるという技術です。現在、がんは、日本人の死因第一位であり、死亡率を低下させるためには、数十万人規模に適用可能な革新的な治療法が喫緊に必要とされています。がん治療法には外科手術・放射線治療・化学療法がありますが、それらは副作用があることや、難治がんには効果が無いなどの短所があります。また、核酸治療や遺伝子治療では、細胞にそれらをとりこませるための機構が必要です。こうした問題を「魔法の弾丸」は解決してくれるかもしれません。

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効果的なドラッグデリバリーシステム実現のためには、人体にとって異物であるミセル粒子をがん細胞まで運んで、細胞に取り込ませる多くの工夫が必要です。例えば、血管に投与された粒子は異物であるため、腎排泄されたり、肝臓による無毒化などで人体から排除されたりします。粒子にはこの人体の機構をくぐりぬけてがん組織に辿り着くように工夫が施されなくてはなりません。また、粒子の大きさが小さすぎるとがんとは関係の無い健康な組織にも薬物が行きわたり、抗がん剤の副作用を引き起こす可能性があります。この問題は粒子の大きさを工夫することで解消できます。がん組織に特徴的に見られる血管の穴のみを通って粒子ががん組織、がん細胞に到達することができるのです(EPR効果)。

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本講座では片岡先生がこの新しい技術について、臨床治験や動物実験のデータを用いてわかりやすく説明してくださいました。講義のテーマが「がん」ということもあって、若い人だけではなく、中高年の方々も多く聴講していていました。講義の後は、質疑応答も活発に行われました。

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担当:久保京子
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