総長講演会〜「タフな東大生」とは〜

2009年12月1日、小柴ホールにて濱田純一総長による講演会「『タフな東大生』とは」が行われました。濱田総長は、入学式などで「東大生はタフであれ」というメッセージを出しています。このタフという言葉はメディアにも取り上げられ、有名なものとなっていますが、改めて総長が意味するところのタフさは何を指しており、そして東大生は今何を求められているのでしょうか。

今回の講演会は、2008年4月に設立された「東京大学学生相談ネットワーク本部」による主催で、総長による講演の他、パネルディスカッション、参加者を交えての質疑応答も行われました。就任して半年を迎えた今、濱田総長は「タフ」さにどのような思いを込めているのでしょうか。


開会の挨拶

18時30分から始まった講演会は、主催である学生相談ネットワーク本部の本部長を務めている古田元夫さんによる「開会の挨拶」とともに幕を開けました。

古田元夫さん
古田元夫さん

古田さんは、東京大学運動会理事長も務めており、タフを自負している運動会の理事長としては「我々の時代が来た」と総長のメッセージを受け取ったそうです。一方で、様々な学生の悩みを聞き、その学生がどうしたら悩みを乗り越えてタフに大学生活を過ごしていけるかを模索する学生相談ネットワーク本部の本部長としては、濱田総長が「タフな東大生」という言葉を出してくれることがとても励みになったとも話していました。

そこで今一度、学生と教職員へ向かって「タフな東大生」ということについて総長に話してもらい、語り合える場を作りたいと考え、今回の講演会が実現したということです。

総長講演「タフな東大生」とは

いわゆる「事業仕分け」への対応で、前週以来いつも以上に多忙な日々を送っている総長ですが、「学生たちにタフになれと言っている以上は自分もタフでないといけない」と思い、厳しいスケジュールの中で出向いた講演でした。

総長が「タフ」さという言葉を初めて使ったのは、入学式での式辞です。「激しい変動の時期を迎えた現代において、東京大学は未来に向けて学術の力とともにタフに進んで行かなくてはいけない」という思いで「タフ」という言葉を出したそうです。「東大生にはタフさでもって、身につけた知識を思いきり活かして豊かな人生を送って欲しい」という思いが背景に込められた言葉なのでした。

濱田総長
濱田総長

それでは、タフさはどのようにして育つのでしょうか。「タフさは、異なった考え方や価値観、言語、生活習慣を持った人々との緊張の中、つまり多様さの中で鍛えられる」と総長は話します。「学生時代に多様性に触れ、知識をベースに自分が多様なものとどう向き合えるのかを知り、経験を積むことで複雑な事態に対応できる力がつく」と話し、「タフさの根底にあるコミュニケーションを大事にしてもらいたい」と訴えかけました。また、「課外活動や社会活動は、多様さと向き合うのに役に立つものですが、一方で学問をすること、授業を受けるということも私たちが直接は体験できない世界の多様性をヴァーチャルに体験できるので、それを通じて世界の多様性を知るということもタフになるための基本になる」とも話し、授業の大切さも強調しました。

一方で、「このようなタフさは一つの「理念型」であり、実に多様な個性を持つ現実の人間、あるいは東大生の誰にでもあてはまるわけではないので、そのタフさにも個性ごとの多様性がある」とも話しました。

「『タフ』さは多様さの中で育つ。また、『タフ』さは多様なものである」。まとめとして総長から出されたこの言葉に多くのヒントがありそうです。

パネルディスカッションと質疑応答

総長が考える「タフな東大生」についての講演が終わったところで、パネルディスカッションに移りました。パネルディスカッションは、総長を含む6名のパネリストと、コーディネーター(司会者)1名で行われました。

パネルディスカッション

まず初めに、尾嶋正治さん(大学院工学系研究科教授)と恒吉僚子さん(大学院教育学研究科教授)が、自身の考える「タフな東大生」についての意見発表を行いました。そして、その意見発表を聞いての意見や感想をパネリストが順番に述べるという形式でパネルディスカッションが行われました。教授、精神科医など、多方面からの意見が交換されましたが、総長が話していた「『タフ』さの多様さ」をリアルに感じることのできるディスカッションであったと思います。最後は、来場者とパネリストの間で質疑応答が行われました。

おわりに

「タフ」という言葉は人間離れした「不屈の精神」のようなものを想起させがちですが、総長がメッセージとして出している「タフ」さとは、むしろ人間味に根差した柔軟性であるということを改めて理解することができました。質疑応答の中で、「タフであれ」とメッセージを出している総長自身も、どんなに忙しくても毎日8時間の睡眠を欠かさないようにしていると話していました。

環境問題しかり、対象が複雑さを増すほど、多様性を受け入れ、異質なものに自分の意見を通す能力が必要になってくるはずです。大学で何をすべきかは、実は自ずと定まってくるものなのかもしれません。

あなたにとっての「タフ」さとは、どのようなものでしょうか。

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掲載日:10-04-01
担当:杉山達彦
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