経済学部長インタビュー

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平成19年度から、新たに金融学科が新設されることになった経済学部。その経済学部の研究内容や教育の特色などについて、植田和男経済学部長にお話をうかがった。


―どのようなことを研究しているのですか。またその目的は何ですか。

植田経済学部長

まず、経済学がどういう学問なのかを説明しましょう。一言でいえば、「社会科学の中の物理学」といえると思います。社会科学は基本的に人や社会がどういう風に形成されるか、あるいは動いていったりするかということだと思いますが、経済原理に限っていうと、物理学のように根本的なところから解き起こして、社会現象を説明していくことを目指している学問です。

少し違う観点から説明すれば、経済現象は人間がからんで何かものやサービスを生産するということなのですが、いろんなものが無限にあれば問題になることはないのです。かなり重要なものが有限にしか存在しないからこそ、それらをどう配分して使ったらいいかということが大事な話になってきます。具体的に言えば、使うことのできる石油の量や、ある時点で世界中に存在している働ける人の数も有限ですよね。そういった有限のものをどういう風に組み合わせて、誰に渡して、何を生産させるのか。つまり、いかに効率的にものやサービスを生産するかということを考えるのです。

その方法はいろいろあるんですけれども、現在の社会ではそれぞれの個人あるいは企業の創意工夫に任せています。市場経済とか言われるもので、これを作りたい、これを買いたいというような、個人や企業の勝手な行動に任せる方法です。これとは全く違ったやり方があって、計画経済というのですが、政府が資源等の最良な分配を考えて、何をどれだけ生産するというところまで決めてしまうものです。一見、計画経済のほうが優位なように思えるかもしれませんが、実は市場経済は、計画経済が非常にうまくいった場合と同じあるいはそれ以上の効果を発揮するということが、ある種理論的に分かっています。

このような理論を作ることが、経済学では一つの大きなポイントです。人や経済がどのように行動するのか、財やサービスなどのマーケット(市場)がどのような役割を果たしているのかを研究する学問。それが経済学と言えるでしょう。

―教育の特色を教えてください。

いろんなことを幅広く教えているのですが、先ほども申し上げたように経済学は物理学に似ている面がありますから、すぐに役立つことを研究してもらうことよりは、基本的な考え方、基礎となる理論などをしっかり勉強してもらっています。そうすることによって、将来新しい現象が起きたときにも、自分でその基礎の理論から考えることができると思います。根本原理を身につけてもらって、それを使って自分なりに応用することが大切なのです。

卒業生の行き先を見ると、3分の1強の卒業生は広い意味の金融の仕事に就職していますが、少し前までは官僚になる人がかなり多かったと思います。ここで教わった経済学が政策などを決める際に直接役に立つかというと、そういう一対一の関係はそんなにないと思うのですが、根本原理を身につけておくことは、経済現象を理解する上で役に立ってくると思います。

また、この経済学部では少人数教育を重視してきたということもあると思います。具体的には週1回のゼミという形で行われていて、少ないゼミでは各学年4、5人、多くても十数人しかいません。3年生と4年生が一緒に取り組むので、多くても二十数名ですかね。そういった少人数で2年間、多くの場合には一人の先生の元で勉強します。それは勉強という意味でも、将来に向けての人的ネットワークという意味でも、相当重要な役割を果たしてきたと思います。

―新設される金融学科についてお聞かせください。

植田経済学部長

現在、経済学部には経営学科と経済学科というものがあります。それに加えて平成19年4月に金融学科が新設されます。金融学科に入ってくるのは来年度の新入生からになるので、実際に3年生として学生が入ってくるのは3年後になります。アメリカにはビジネススクールがありますよね。ビジネススクールでは大学院レベルの教育が行われていますが、金融学科ではその一部の授業を学部のレベルで行います。金融学科は他の2学科よりも数学を使いますので、おそらく理系から進学する学生が多くなるのではないかと考えています。

―社会への応用や産学連携など、社会とのつながりを教えてください。

もちろん、基本的には学生を鍛えて社会へ供給するということです。それから我々が行った研究が何らかの形で間接的に企業で使われることがあったり、あるいは政府が政策を決める際の参考になったりすることが社会への貢献になるかと思います。

最近では、もっと直接的に政策に携わるということも増えてきています。例えば私の場合ですと、7年間日本銀行に行って、実際に金融政策を決めていました。他にも、経済財政諮問会議という政府の重要な会議に出ている先生もいます。経済政策を決めるときに、既存の研究成果を使うのはよくあることですし、新しい問題であれば、昔からある考え方を応用して、新しい研究成果を出すような形で政策をしていくということもあります。

他にも、民間の金融機関や企業との共同プロジェクトといったものは、割とたくさんあるんです。その中で大きなものは2つあって、その一つは製造業との関係です。製造業の工場で働く人たちをどのように教育するかということについてのアカデミックな研究成果が出ているのですが、それを現実の工場の中で教育を担当している人たちに教えてあげるというプログラムがあります。経済学部の中で経営の研究センターというものを作って、そこに経営についての研究をしている先生が張り付いて、企業から派遣された人を課外授業みたいな形で教えています。もう一つは、金融機関などから寄付を出していただいて、金融に関する研究を進めています。こちらは、金融センターという組織が担当しています。経営の研究センターは、現在学部段階のインフォーマルな組織ですが、近いうちに大学全体の組織に格上げしてもらおうと思っています。

―今の学生に求めることを教えてください。

植田経済学部長

最近では資格を取得しようとする学生が増えてきています。法学であればもちろん司法試験でしょうし、経済ではそれに加えて会計士の試験などがあります。資格を取った方が早めに自分が評価されるということで、すぐに役立つことを身につけたいという気持ちが以前より強まっているのでしょう。その気持ちももちろん分かるのですが、大学生の間はもう少し経済現象の根本的な理論とか原理について勉強しておいた方が、長い目で見るとプラスが大きいと思います。まあ、どちらかだけしか勉強してはいけないわけではないですけど、そういった根本的なところにも時間を割いてほしいと思います。もちろん、経済以外の分野でも同じことが言えると思います。

これから経済を学びたいと考えている学生に関しては、もちろん経済のことを勉強してきていただくのは歓迎なのですが、やはり重要なのは英語と数学です。英語は自明だと思うのですが、経済の基本的な理論では数学を使うことが多いので、教養で勉強する程度の数学をきちんと身につけていただきたいと思います。文系のほかの学部に比べて数学を使う頻度は多く、進学振り分けで理系からも毎年10人弱の学生が経済学部に進学しています。来年度から進学振り分けの制度が変わり、全科類進学枠というものができるので、理系の学生が30人ほど進学してくる可能性もあります。


経済学部は、政府・企業・金融機関などと密接なつながりがあることを改めて実感しました。これからも日本経済をリードしていく学部として、社会と連携しながら研究・教育を進めていくことでしょう。

経済学部ホームページ: http://www.e.u-tokyo.ac.jp/


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掲載日:07-01-09
担当:廣瀬俊典
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