基礎演習

今回の講義紹介は、文系の1年生を対象として夏学期に行われている必修科目「基礎演習」を紹介する。この科目は、学生が25人程度のグループに分かれて、教員から与えられたテーマに基づいて課題を設定し、課題についての研究をした上でレジュメにまとめ、グループの前で発表するという、東大独特の授業である。この科目を担当する教員の一人、ロバート・キャンベル助教授にお話を伺った。


1. 学び方の学び | 2. 学生に伝えたいこと


学び方の学び

キャンベル先生

基礎演習は、簡単に言えば「学び方を学ぶ」ための授業です。東大の中で具体的に何かを学び、あるいは自分が何を学んでいるのかということを表現し、説明をするために、まずどういう研究の仕方があって、自分が学んだことをどのように伝えていくかという基本的なルールを教えています。具体的な問題にあたって、自分の頭と指先を使いながら、学ぶということがどういうことなのかを学生たちに実感してもらうのがこの授業の狙いです。私たち教員が指示したり継続的に拘束したりすることで色んなものを学んでもらうことと、学生みずからテーマを見つけて試行錯誤しながら答えを出して、学生同士で納得し合えるような形で自分から知識や技能を身につけること。これらは他の授業では味わえない構造で、この両輪があって基礎演習の授業が成り立っています。研究をするためのノウハウを学ぶ授業というのは、大学の講義だから当たり前に存在するかのように思われますが、実は日本の教育システムにはありそうで無いものなんです。また、基礎演習で習ったことをもう一度応用的な形で広げていく「方法基礎」という授業が文科三類の学生を対象に開かれています。

私は江戸時代の日本文学を専門として研究していますが、基礎演習というのは教員が専門として持っているものを伝えるわけではないんですね。学生が本来持っている潜在的な感性を引き出せるように、広いテーマを設定しています。私は今年は「文化の潮流」という非常に広い茫漠としたテーマを与えたわけですけれども、まず学生は潮流と文化とは何かということも含め、その中で何か組み立てていけるテーマを見つける。テーマについて説明をして、調べてレジュメにまとめ、教師に見せてフィードバックを受けて、それを練り上げて皆の前でレジュメを見せながら発表する。それを聴いた人が批評・感想文を書いて、発表した学生に渡す。そして発表の司会もする。最後に批評文や自分が発表して実感したことをもう一度練り直して今度はレポートにまとめる。私はそんな風に基礎演習の授業を進めています。

基礎演習は担当する教員によって、授業の進め方が多種多様に異なっています。確かに共通の理解はあるけれども、それぞれの教員の専門分野やポリシーがプラスに働くように工夫しているんです。教員が学生にテーマを与えるとき、それぞれに細かいテーマを与える教員もいるし、1つのテーマに基づいてさらにグループに分けてテーマを与え、一つのストーリーになるように学生に調べさせることもあります。でもレジュメを作って発表するのはどの教員でも共通していると思います。実際に見て調べたことをレジュメにまとめて発表するというのは自分が学んだことを表現する重要な行為だからです。

キャンベル先生

私は何年か基礎演習を担当してきましたが、「自由で自発的な学び方と継続的な拘束」というスタンスを持ってやっています。この両方を組み合わせてやっていくことによって、学ぶことの実感・手ごたえを覚えてもらうと同時に、東大のどこにどういうものがあるのかというのを伝えています。ちょうど今年の春、私が企画した特別展を駒場美術博物館で開催したので、授業で皆を博物館に連れて行って、そこが一つの社会に開けた東大の美術館としてあるのと同時に、学ぶ場所としての博物館のありかたを学生たちに教えました。また、メールを通して指導する中で、彼らが出してきた参考文献やレジュメの組み立て方を見て、それを見て修正するというよりも、他の方法があるんじゃないか、こういう風にしたら面白い結果になるんじゃないかと出来るだけ具体的に提案しています。

教員が一方的に教えている訳でもなくて、学生が調べてきた内容から教員の方が学ぶことも多いんです。学生が選んでくるテーマは自分には関係ないものですから、学生が1日か2日かけて調べてくればこちらにはもう未知の世界です。学生が挙げる文献や問題はやはり意欲的に選ばれたものなんですね。例えば下水処理のことであったり、お茶の歴史であったり。でも課題があって自分の問題をくっきりと見えるような形にして、それを扱って研究していこうというときに、共通の過程を踏んでいないと到達しない。その共通の過程については私たちはプロなんです。だから基礎演習が成り立つわけですけども、私たちの方が教えられる事柄も多いんです。


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掲載日:06-10-24
担当:渡邉洋平
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