国際関係論

グローバル化が進む中、私たちは国際関係をどのように見ていけばいいのだろうか。今回の講義紹介は、「国際関係論」担当の古城佳子教授にお話をうかがった。


1.「国際関係論」について | 2.学生に対して


国際関係論という授業について

古城先生

国際関係論は色々な分野に分かれていますが、国際関係で起きる事象を対象にして、何が起こっているのか、どういう風に問題を解決しなくてはならないか、について研究しています。最も大切なのは戦争と平和の問題で、「どうして絶え間なく戦争が起こるのか」という問題意識があります。皆がよくないと考えながらも戦争は絶え間なく起きている状況を少しでも抑えられれば、という思いが研究者にはあります。難しいのは、問題を意識してはいるものの、それを解決する処方箋を簡単に出せるわけではないことです。ですから、授業ではどうやって道筋を考えていくか、その材料を提供しています。一つの答えを提示するのではなく、当事者の中でも見解が分かれるような問題を提示することで、国際関係についてどういう考え方があるのかを学生に対して紹介しています。

この講義のねらいは、国際関係が総体としてどういう特徴を持っていて、それが国内政治の見方と同じような見方で考えて良いのか、悪いのか、そういったところから国際関係を考えることです。日本やアメリカなどそれぞれの国の政治については受験の世界史などで知っている学生は多いですが、本講義では世界のシステムがどういう構造になっているかを考えて欲しいと思っています。日本政治やアメリカ政治のようにひとつひとつの国単位に分解できたら、国際関係論という科目はいらないですから、国際関係に特有な特徴やシステムはどうあるのか、国内社会とどういう点で違うのか、そういうことを考えて欲しいと思っています。

一つ例を挙げましょう。政治体制がしっかりしている国の内部は、秩序が保たれています。しかし、国際社会においては秩序がそれほど保たれていない。では、どうすればいいのか。国内なら法律を制定することで保てます。国際政治で同様に考えると国際法の整備があてはまりますが、そもそも国際政治には中央集権的な政府がありません。国連は確かにありますが、国内の政府よりも権限は弱いですし、国際社会においてルールを作ることは国内政治で作ることよりはるかに難しいことです。「国際政治は力しかない、軍事力を整備するしかない」と主張する論者もいます。ほとんどの社会の国内では、暴力装置はすべて政府が管理していますが、国際社会においては、自衛のための戦争や軍隊を持つことは違法でもありません。そういった中で、秩序はどうやって形成できるのかを考えています。

専門分野との連関

古城先生

私の関心は国際政治経済論、すなわち経済的な事象が国際政治にどう影響を与えているかについてです。私が学生の頃はちょうど冷戦のときで、国際政治において軍事力が重要だと主張されている時代でした。一方で日本では軍事力に対して規範的な反対がありました、例えば「軍事力は道徳的に見てよくない」などなど。確かにそうなのですが、私は軍事力に代わって国際政治への影響を与えられるものがないかなと思っていました。その頃、相互依存論に関する論文を読みました。経済的な関係を通じて、協調が生まれる可能性を示唆した論文です。私はその観点に共感を覚え、経済を軸にして国際政治が協調できるにはどうしたらよいのかという点について研究をすることにしたのです。もちろん、経済をめぐっても対立が生じてきているわけですから、問題はそう単純ではないのですが、国際政治を考える上で経済の観点は見逃すことはできないでしょう。

そういう意味で、現在の米中関係は経済的交流が政治的関係に与える影響を問う一つの試金石となるでしょう。政治的に両国は体制が全く違います。冷戦時代であれば経済体制は政治体制に付随して東西それぞれが閉じていました。しかし、現在の中国の経済発展はアメリカの市場や資本無くてはありえなかったでしょうし、アメリカも中国の巨大市場を無視できません。ですが、軍事的には同盟関係でも何でも無く、懸案事項を多く抱えています。クリントン政権時、中国もアメリカの巨大な資本を断ち切れないから経済的関係を強化することで、軍事的台頭も抑えられるのではないかという考え方がありました。一方、保守派の人たちは、中国が経済発展するとその利益を軍事力増強に向けようとするから危ない、と経済的関与増大による協調という考え方に反対していたのです。このように、経済関係のありかたについて考え方は対立していますが、経済と国際政治、安全保障の観点から見て米中関係の今後は見逃せない問題です。

この他、いくつか経済的交流の増大と国際政治という観点から興味深い例をあげてみましょう。貿易により製品が世界に流れていくということは、技術も世界に流出する可能性が高くなることに他なりません。技術を民生技術か軍事技術か、区別することが困難になる中、経済的交流を自由化する場合、安全保障に関するリスクをどのように減らして行けるのか、という問題も、主権国家が直面している問題なのです。また、例えばGATTからWTOになったことで明らかになったように、多数の発展途上国が国際経済に関する政治的枠組み作り(制度化)の舞台に出てくるようになりました。つまり、以前は国際経済についての政治的枠組み作りは先進諸国間でもっぱら行われてきたのですが、現在ではG20など、発展途上国の存在が大きくなり、政治的枠組み作りにおける非同質性が出てきたのです。また、多国籍企業の台頭も著しく、国際経済に関する制度化にこのような非国家的主体が関与する度合いが高まっています。このように、経済的交流の増大から発生する政治的な問題には様々な論点があるのです。


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掲載日:07-10-24
担当:野島史暁
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