基礎統計

今回の講義紹介は、総合科目「基礎統計」について紹介する。毎年非常に多くの学生が受講する科目である。この講義を担当している廣松毅教授にお話を伺った。


1.講義について | 2.学生に対して


講義の概要

廣松毅教授

高校までの教育を終えたばかりのみなさんは、統計は数学の一部と考えているようですが、必ずしもそうではありません。例えば小学4,5年生から、理科や社会において自分でデータを観察しグラフにして、その特徴を知るということはやっています。データの整理という意味では、数学だけでなく理科や社会でも統計を習っているのに、みんな統計というと数学だと思ってしまう。決してそうではないと教えることが講義の基本的な目的ですね。

駒場で開講されている統計関係の講義は、大きく分けて基礎統計と社会統計学と統計分析の3種類です。そのうち、まず基礎統計の講義は、授業の最初のイントロダクションでもよく言っていますが、料理に例えて言えばレシピを教えることにあたります。与えられたデータをどのようにして整理して、理解しやすい形にするかを教えるわけです。教養の基礎統計の講義では、確率の基礎概念から始まり推定や検定などを教えていています。そのためには数理的な内容も必要ですが、厳密な証明などは省略して、数理的な側面はあまり強調ぜずに、「統計的なものの考え方」を中心に講義をしています。

2番目の社会統計学では、名前の通り社会現象を統計データで表すのにどのようなものがあるかを教えていて、さっきの例えで言えば料理の食材ですね。社会現象と言ってもデータの収集の仕方は分野によりかなり違っていて、私が教えているのは経済統計が中心で主として政府機関が作っているデータです。

3番目の統計分析というのは、レシピと食材が揃ったらどういう料理ができるかを教えているようなものです。いろんな分野におけるデータを用いて分析した例などを講義しています。

統計の最も基本的な考え方は、データからその奥、ないしは背後にある規則性を見つけ出すことであって、それを「統計的なものの見方」とか「統計的なものの考え方」と言っています。現在、統計と言った場合には、主として確率の概念を用いた推測統計を意味しますが、それを数学的な意味で定式化したのが推定論や検定論という考え方です。教養の基礎統計の講義で教える考え方や概念は、多くの分野で今言った統計的な規則性の発見や理論の検証に用いられています。

統計の萌芽は17世紀の半ばくらいにまで遡りますが、現代の統計学の基礎ができてきたのは1920年代から30年代くらいです。すなわち、基礎統計の講義で実際に教えている内容の主な部分が今日のような形で確立したのは、だいたい1920年代から30年代くらいにかけてです。

授業の特徴と心がけ

廣松毅教授

教える立場にとっては幸せなことですが、基礎統計の受講者は大変多い。ただし、今の授業を1学期中に2、3回繰り返すのは、時間的にも身体的にも不可能なので、仕方ないと言っては悪いですが、900番教室という大きな教室で講義を行っています。受講者の数は年によって変わりますが、だいたい毎年 800人から1000人くらいです。夏と冬両方担当していますが当然夏の方が多くて、冬は500人未満という状況です。統計というのは理論だけでなく、現実のデータを見ることも重要です。その意味では、授業中に受講者全員が実際にデータに基づく計算ができるくらいの少人数クラスが理想的なのですけどね。大人数ということもあり、学生の授業評価アンケートではなかなか黒板の字が見えないとか、声がよく聞こえないというクレームがありますので、その点はなるべく注意しています。900番教室の黒板に精一杯大きな字を書きますが限界はありますよね・・・。なんとかカバーしようと思っているのですがなかなか難しい問題です。

内容に関して心がけていることは、先ほども言ったように、あまり数理的な側面を強調しないことです。本来、統計は数学の一分野ではありませんが、数学の言葉を使った方が説明しやすいこともあります。それでも、数学的に高度な証明などはあまり扱わないようにしています。前期課程の学生のみなさんは、高校を卒業したばかりで、社会的な意味で言えばほとんど白紙の状態です。その意味で我々前期課程の教員は白紙のキャンバスに元絵を描いているという側面もあります。統計に関して言えば、まさにみなさん白紙です。ですから授業の心がけとして最も基本的なことは、受講した後、最低でもみなさんに統計は嫌いだと言われないようにしたいということです。


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掲載日:08-04-23
担当:栗田萌
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