微生物・医動物学

受講前

「微生物・医動物学」は、医学部健康総合科学科内定者を対象とした細菌やウイルス、寄生虫に関することを学ぶ講義です。「健康」について学ぶ学科としてはとても大切な授業の1つと言えるでしょう。この授業は、健康総合科学科の多くある必修科目のうちの1つであったため、筆者は特に何も考えずに授業に望みました。

細菌学

ペニシリンという薬品を知っていますか。ペニシリンは抗菌薬の1つです。抗菌薬とは細菌にのみ作用して細菌の発生や増殖を抑制する薬品のことで、ペニシリンのような細胞壁合成阻害剤のほか、細胞膜機能阻害剤、DNA合成阻害剤、タンパク合成阻害剤、RNA合成阻害剤など様々なものがあります。しかし抗菌薬が多用されると、多剤耐性菌が出現したり、薬剤アレルギーを引き起こしたり、臓器障害を引き起こしたりすることがあります。

こうした抗菌薬の作用機序や抗菌薬の使用による副作用を理解するために、細菌学では、細菌の分類と構造、増殖と遺伝の行われ方、そして人に感染した場合の症状についての講義がありました。体系的な内容で講義はわかりやすく、抗菌薬の働きなどの難しい話に入っても困難なく授業を聞くことができました。

この他臨床的な講義もありました。例えば黄色ブドウ球菌に感染するとどのような症状が現れるのか、どのような治療がなされるのか、どうしてその治療法が選択されるのかといった、個々の感染症の詳細まで踏み込む授業が展開されました。

ウイルス学

〇〇ウイルスという名前の中で最も馴染みのあるもののひとつに、ノロウイルスがあげられるでしょう。ノロウイルスは感染者の糞便・嘔吐物中に存在しているというのは広く知られている話ですが、ノロウイルスは乾燥環境に強いため、冬場のような低温低湿下では空気中を漂い食物に付着することもあります。排泄物中に存在するウイルスが川や海に到達し牡蠣などの貝に濃縮されることもあり、ノロウイルスの濃縮した貝類を摂食するとノロウイルスに感染し、食中毒を引き起こします。ノロウイルスによる食中毒の予防策としては、食品は必ず火を通してから食べる、手洗いをしっかりと行う、嘔吐物処理に次亜塩素酸ナトリウムを用いる、といった方法があります。

講義内で取り上げられたウイルスは他にも、ロタウイルス・ヘルペスウイルス・HIVなど、どれも今までに一度は耳にしたことがあるようなウイルスばかりでした。いずれのウイルスに関しても症状や予防策などが解説され、日常生活に活かせる知識を得ることができました。

臨床微生物学

さてここで問題です。インフルエンザの人と感染を防ぎながらコミュニケーションを取りたい場合、次のうちどの対応が正しいでしょうか。

1つ目は、陰圧の部屋に感染者を隔離する。

2つ目は、感染者の1m以内に近づかない。

3つ目は、感染者に素手で触らない。

インフルエンザに限らず、結核や水痘、マイコプラズマ肺炎などについても同様の質問ができます。

それぞれの感染症ではどれが正解なのか、またどうしてそれが正解なのかを理解できたのが、この臨床微生物学です。

インフルエンザの場合に関して説明すると、インフルエンザウイルスの粒子は5μmより大きいので空気中には浮遊せず、咳やくしゃみなどから感染します。空気中に浮遊しないので陰圧の部屋を準備する必要はなく、咳やくしゃみから感染するので感染者に素手で触る分には問題ありません。したがって正解は「感染者の1m以内に近づかない」です。インフルエンザ予防というと、多くの人はこぞって手洗いうがいをするようになります。もちろん、感染者がいるかもしれない人混みの中にいて、感染者の咳やくしゃみの飛沫を吸い込んでいる可能性が否定しきれないだけに、そうした対策は大変有効です。しかし、なぜその対策で良いのかという理由までわかるのは、大変興味深いのではないかと思います。

寄生虫学

戦後、日本の公衆衛生は劇的に向上し、寄生虫感染症はあまり見られなくなっています。しかし、普段私たちが口にする食べ物には、様々な寄生虫症の原因となるものが含まれている可能性があります。

例えば、生野菜には寄生虫の卵が付着している可能性があり、この卵を摂食すると回虫症になって腹痛や嘔吐を引き起こすことがあります。

サバやタラ、スルメイカなどを生食すると、アニサキス幼虫を摂取する可能性があり、激しい腹痛を引き起こすことがあります。

サクラマスやイワシを生食すると、プレロセルコイド幼虫を摂取することになる場合があり、下痢・腹痛・嘔吐を引き起こす可能性があります。

牛肉・豚肉を十分に加熱しないまま摂食すると、無鉤条虫症や有鉤条虫症に感染し、死に至る場合もあります。

このように、人間がよく口にする食物には寄生虫症を引き起こす寄生虫の幼虫や卵が付着している可能性がありながら、日本では寄生虫関連の食中毒がない事実に、日本の公衆衛生レベルの高さを実感します。授業では診断法や治療法にも触れられ、わずかばかりの安心感が生まれたものの、授業を受けて数日の間、筆者は何を口にするにも一抹の不安が常に頭をよぎっていました。

試験

評価方法は学期末の筆記試験でした。どの回の講義も、全員が熱中して聞き入ることができたのか、ほぼ皆単位を取得することができていました。覚えるべき内容は多岐にわたるとはいえ、実生活との関連が強いためか、試験勉強もそれほど苦痛ではなかった印象でした。

受講を終えて

この授業では身近なテーマが多く盛り込まれていて、全6回の講義のいずれの回も授業時間の3時間があっという間に感じられるほどでした。ウイルスや細菌の人体への作用機序や、それによる人体への影響、予防策など、日常生活に活かせる内容を習得できたように思います。

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掲載日:14-05-11
担当:川口倖左
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